日本を含む世界各国のネットワークカメラの映像がまとめて見られる海外Webサイトの存在が、2016年の年明けから大きく報じられて世間の関心を集めた。 問題のWebサイトを見ると、プライバシーに関わるような映像が公開されているケースもあり、監視カメラを取り扱うメーカー、施工業者、販売店では、事態を重く受け止めて適切な運用方法を改めて告知するといった対応に追われている。 そこで連載2回目となる今回は、日本国内で5割以上のシェアを誇るともいわれているパナソニック(パナソニックシステムネットワークス)で、セキュリティシステム事業部に在席する寺内宏氏に、同社のネットワークカメラの安全運用に関して話を聞いた。●課題は対応策の周知徹底 最初に、今回の騒動を受けてパナソニックが行った取り組みをまとめると、もともと2015年3月17日から同社の製品Webサイトで掲載していた「カメラ、レコーダーなどへの不正アクセスにご注意ください」という注意文に追加を加えた情報を同サイト内の「お知らせ」とバナー表示で2016年1月21日に公開。 公開された主な注意点としては、次の3つ。・ 「ユーザー認証」を「ON」にする。・ 独自でユーザー名/パスワードを設定する。・ 初期(工場出荷時)のユーザー名/パスワードを削除する。 Webサイト以外では、新たに出荷される製品に関しては、設定時にポップアップウインドウで警告画面の表示を出したり、取扱説明書への記載、注意喚起をまとめたチラシの同梱なども行っていくそうだ。 そうした取り組みと平行して、ユーザー対応としては、同社が掌握している範囲内でユーザーに連絡し、必要に応じてサポートを実施していくとのこと。 これにて一件落着かといえばそうではなく、同社の場合は直接取り引きのある業者だけでなく、二次代理店、三次代理店、さらには世の中に無数にあるネットショップなどでも同社のネットワークカメラが扱われているため、自社の製品Webサイトからの「お知らせ」だけでは不十分だという認識を寺内氏は持っているという。●公開を前提としたカメラでも要注意 寺内氏によれば、今回の騒動により不安を感じたユーザーは大きく2つに整理できるという。 1つ目が本来映像の公開を望んでいないユーザー。そして2つ目が、映像の公開を前提に設置していたものの、まさかこれほどまで広く公開されているとはと驚いているユーザーだ。両者はとるべきセキュリティ対策は変わらないものの、認識すべきポイントが異なる。 前者の場合は、工場出荷時のID及びパスワードをそのまま運用することの危険性を知ってもらうところから注意喚起する必要がある。なぜなら問題のWebサイトで公開されていた監視カメラ映像は、いわゆる不正アクセスによって覗き見られたワケではなく、工場出荷時のIDとパスワードをそのまま使っていたものが大半だからだ。 また、パナソニック製品では映像閲覧時に行うユーザー認証のON/OFFの切り替えができ、OFFにした場合は、未登録ユーザーでも視聴が許可されるため、今回の騒動を受けて常時「ON」にすることを推奨している。 設定項目や手順は製品により異なるが、安全運用の基本概念となる、「工場出荷時のID&パスワードからの変更」「ユーザー認証をONにすること」はマストの対策といえるだろう。 ちなみにこうした設定変更に関しては、ネットワークカメラのみならず、セットで運用されるレコーダー、ソフトウェアにも必要になるので覚えておいて欲しい。