教育のICT化にともない、さまざまなデジタルサービスやツールが教育現場に取り入れられるようになっている。Google for Education日本統括責任者の菊池裕史氏に、デジタルサービスを教育現場で使う意義や活用例を聞いた。
Googleが提供する「Google Apps for Education」はメールの「Gmail」や、「マイクロソフトオフィス」と互換性をもつ「ドキュメント」、クラウドストレージの「ドライブ」、「カレンダー」などのツールを先生と生徒が共有するサービス。現在は全国の大学や高等学校、中学校でも採用されている。審査に通った学校で、学校の決めたポリシーのもと、先生と生徒はGoogle Apps for Educationのツールをすべて無料で使用できる。
さらに、Googleは2015年からは先生向けの支援ツール「Google Classroom」の提供を開始した。Google Classroomでは、授業ごとにクラスを作り、掲示板や課題提出などの管理が簡単に行えるため、Google Apps for Educationの利便性が格段に上がっていると言えるだろう。
現在、全世界では5,000万人のユーザーが「Google Apps for Education」を利用しており、「Google Classroom」のユーザーは1,000万人にのぼる。Google Classroomの機能や、教育現場でデジタルサービスを利用する意義とは一体、何だろうか。
◆個人向けGoogleサービスを教育現場へ…Google Apps for Education
--「Google Apps for Education」とはどのようなサービスですか。
コンシューマー向けの製品である「Gmail」などのGoogle Appsを、教育機関向けに作り変えた製品が「Google Apps for Education」です。たとえば、「大学で3,000人の新入生を管理したい」「生徒にGmailを使わせたいが、ドライブにファイルをアップすることはできないようにしたい」など学校の情報共有の基盤として使うために、さまざまな機能を追加した学校向けのパッケージになっています。
--学校では「Google Apps for Education」をどのように活用しているのでしょうか。
Google Apps for Educationは反転授業の動画のほか、遠足や旅行に行った際の写真をGoogleドライブで共有したり、授業の課題を出したりといったさまざまな使われ方をしています。第一に、共同編集ができる点が非常に評価されています。ただ、Google Apps for Educationは便利な反面、先生側は情報や資料を管理するのが非常に大変です。それらの一括管理を簡単に行えるようにしたものが「Google Classroom」です。
--日本では具体的にどういった学校が導入していますか。
Google Classroomに関しては、大学、高等学校、中学校で導入されていて、特に高等学校での利用が多いです。日本の学校の場合、インフラの問題もあり、私立学校を中心に普及し始めています。Google Apps for Education自体は、もともと大学の情報システムを支援する目的で作られたため、当初は大学を中心に普及していきました。Google Apps for Educationの導入事例としては、慶應義塾大学や北海道大学、立教大学などの大学のほか、中学や高等学校では広尾学園、富山国際大学付属高等学校などがあります。
◆Google Apps for Educationと併用、先生に一括管理を
--「Google Classroom」の具体的な機能を教えてください。
Google Classroom(以下、Classroom)は、Gmailのアプリのひとつとして、Education版のユーザーのみ使用できます。先生と生徒側の画面が異なり、先生のアカウントでは自分の受け持っているクラスや生徒のグループごとに「クラス」という枠が作成できます。このクラスを作るのは非常に簡単で、クラスを作ればGoogleグループスをそのまま招待できるほか、クラスのIDを生徒に伝えて参加させることも可能です。
ストリームでは、先生と生徒、そして生徒同士の連絡やコミュニケーション、課題を出す、クイズを出すといったことが行えます。ClassroomはGoogle Apps for Educationのアプリのひとつで、ほかの機能と連携しているため、このストリームに先生が投稿するとGmailに通知が届きます。頻繁にClassroomをチェックしていなくても、メールでリマインドが飛んでくるので、見忘れなどを防げるというわけです。
Google Classroomは、これまでの問題点であったクラスごとの課題やデータの管理といった先生側の問題を解消したことで、作業時間を短縮し、より効率的に本来の授業に取り組めるようになっている。生徒だけでなく、先生側にも「21世紀型のスキル」として、これらのデジタルツールを活用していく力が求められているのかもしれない。