この「村田製作所チアリーディング部」は、球の上でバランスを保ちながら、全方位で移動できるロボットだ。デモでは10台のロボットが4m四方の範囲で、さまざまなフォーメーションを組みながら、パフォーマンスを繰り広げた。
フォーメーションについては、三角形、斜め二列、斜め一列、円形、ハート型などに組み替えることができ、回転しながら二手にに分かれて交差したり、リーダーのロボットを他のロボットが追従するなど、かなり複雑な動きもスムーズにこなしていた。
村田製作所は、ロボット自体を目的としているのではなく、同社の電子デバイスや技術力の可能性を広くアピールすることを目的として、これらのロボットを開発してきた。実際に今回使われている部品類は、ジャイロセンサ、超音波センサ、赤外線センサ、マイク、通信モジュールのほか、コンデンサ、インダクタ、フィルタ、フェライトビーズ、水晶振動子、マジックストラップなどだ。
ボールの上に載っても、倒れそうで倒れない制御の秘密は、3つのジャイロセンサで傾きを図り、その方向に本体を動かして、重心を地面とボールのちょうど真上でキープしているからだ。手のひらに定規を載せ、倒れないようにバランスをとる倒立振子のテクニックを応用したものだ。
さらにチアリーダーロボットは、他のロボットに接触しそうでも、ぶつからないようにワイヤレスセンサネットワークにより位置制御されている。具体的には、ステージ上方にある2つの発信機によって、超音波と赤外線を同時に出し、到着時間の差から現在位置をリアルタイムに算出している。これは、雷がピカっと光ったあとにゴロゴロ音が鳴るまでの時間差から位置を測定するのと同じ原理だ。
位置を計測すると、各ロボットは920kHz通信モジュールで通信を行い、制御システム側に把握した情報を伝える。そして複数のロボットが同期・協調するように指示を受け、統一のとれた美しいフォーメーションを実現する。これらの群制御技術は、京都大学の松野研究室との共同開発によるものだという。
パフォーマンス中に腕を上下に振ってもバランスを崩さずに移動できる点も見ものだ。移動速度は毎秒30cmと歴代ロボットでは最速クラスとなっている。連続駆動時間は1時間ほど。また手や目の色は、3色LEDを利用しており、どのようなカラーにでも合成できる。
村田製作所でロボット開発のリーダーを務める、広報室企業広報課ムラタセイサク君開発スタッフの吉川浩一マネージャーは「ムラタセイサク君やセイコちゃんは、本体に内蔵されたリアクションホイールでバランスを取っていました。しかし、チアリーダーロボットでは、球という媒体を通じて地面をけっているため、球の滑りや転がり摩擦がノイズとして乗ってくることが問題になりました。そのため球の状態によってロボットの細かいパラメータを調整したり、球自体も中空金属に滑り止めコーディングを塗るなど、いろいろな工夫を凝らしています」と、難しかった点について説明してくれた。
チアリーダーロボットによるフォーメーションのデモンストレーション