当連載の中で2回にわたって、ケイ・オプティコムが提供するauのLTE網を利用可能なMVNOサービス「mineo」をレビューしてきた。都心部では、言ってみればどの通信キャリアでも電波は入る。差が出るのは、郊外や山間部など電波が途切れる境界域であろう。auの、LTE網しか使えないということであまり期待していなかったmineoが思いのほか山間部でも使えたほか、地方では絶大なる信頼性を誇るNTTドコモとは山間部のエリア配置にずいぶんと違いを見出すことができ、各通信キャリアの戦略や使命感に違いが見られたのが面白かったので、今回は青森・八甲田連峰周辺の電測の旅を記すことにした。■まずは青森・八甲田周辺の電波状況をチェック 携帯電話黎明期から、各キャリアの通信エリアの拡がりを携帯電話端末で実際に体感しながら、モバイルサービスの発展と共に歩んできた筆者にとって、第4世代となるLTEネットワークの発展が当時の黎明期におけるエリア拡張を彷彿とさせてくれて非常に面白い。都市部など人口の多いエリアは3キャリアとも当たり前にカバーできているが、今拡張を続けているのは人口が少ない郊外や山間部となる。ここでは各社のエリア拡張に対する戦略が見え隠れして興味深い。今回、青森・八甲田連峰の周辺を中心に、とくに地方ではエリアが最も充実していると信じられているNTTドコモとauとで電波の入り具合を比較してみた。 今回、電波状況を計測したのは青森市内や八甲田連峰周辺の主要スポットだ。筆者が勤める青森公立大学は第53回のコラムでご紹介済みだが、ここはNTTドコモ、auの両キャリアともばっちりLTEが入るスポットである(もう1社にはぜひLTE化を早々に果たしてもらいたいものだ)。そして大学から国道103号線を山間部に入っていくと、八甲田の南麓を抜ける形で十和田湖方面まで道が続いている。まずは八甲田山頂を結ぶロープウェイに乗車し、八甲田山頂公園を目指した。その後ロープウェイを下って十和田湖に向かう途中にある名湯・酸ヶ湯温泉へ。さらに八甲田連峰をぐるりと回る形で北麓に抜け、八甲田温泉と、途中でたまたま見つけたみちのく深沢温泉で一休み。そこから市街地方面へ下り、雪中行軍遭難者銅像を見て、さらに県道40号を下って八甲田雪中行軍遭難者資料館をゴールとした。 このうち、市街地はどのキャリアもLTE化を果たしているので、山間部の境界域にクローズアップしてエリアマップを比較してみたい。最近はエリアマップを詳細に比較することは無かったが、NTTドコモとauではずいぶんとエリア化の戦略が違うことに驚かされた。何より驚いたのは、auのLTEエリアが山間部の相当奥まで広がっていること。一方のNTTドコモは、まだまだ3Gのエリアがほとんど。また、両社がカバーしている範囲が全然違うということにも着目したい。たとえば、ロープウェイの「山頂公園駅」はauはLTEでカバーされているのに、NTTドコモはマップ上では「圏外」だ。このロープウェイは冬季はスキー客を満載し、スキーヤーは山頂駅から山麓や酸ヶ湯方面に樹氷をすり抜けるコースで厳冬の八甲田スキーを楽しむ。auはこうしたスキーヤーが滑走する範囲をしっかりとLTEエリアとしてカバーしている。ところがNTTドコモは意外にもこのエリアをまったくカバーしていないのだ。 酸ヶ湯温泉も青森を代表する観光スポットだが、auがLTEでエリア化しているのに対し、NTTドコモは3Gだ。一方、八甲田連峰北麓は、3Gではあるが、圧倒的にNTTドコモが有利。auがほぼ「圏外」なのに対して、NTTドコモは県道40号を中心にしっかりカバーしているのである。 ともあれ、実際に電波状況の計測(電測)に出かけてみた。 大学を出て国道103号を上っていくこと約30分、八甲田ロープウェイ山麓駅に到着。ここからロープウェイで山頂公園まで昇ってみた。この時期は登山客やハイカー、そして観光客で賑わっているが、スマホ数個だけ握り締めてひたすらディスプレイを覗いている筆者は当然のことながら1人だけ妙に浮いていた。それはともあれ、山頂公園駅に到着。まずここで驚いたことは、NTTドコモのエリアマップ上では圏外のはずだった、ロープウェー車内および山頂公園周辺でNTTドコモのLTEを拾うことができた。おそらく観光客対策としてロープウェイと山頂公園周辺だけカバーさせているようだ。山麓駅のホーム横に、山頂駅に向けた指向性アンテナを発見したが、おそらくこれから電波を発射しているのだろう。山頂公園駅展望台から青森市街や陸奥湾、そして岩木山などが望めるのだが、あいにくこの日は濃霧で視界は30mほど。周囲真っ白で何も見えなかった。仕方なく、山頂公園駅2階の食堂名物「ジンギスカン定食」を食して再びロープウェイで下山することに。 続いて、酸ヶ湯温泉に向かう。ひたすらワインディングの森を抜けていくと、突然大きな和風の建物が見えてくる。これが酸ヶ湯温泉である。江戸時代前期の1684年(貞享元年)の開湯と伝承される。山奥にもかかわらず、古くから湯治場として知られる一軒宿で、総ヒバ造りの男女混浴「千人風呂」と、こじんまりとした男女別の「玉の湯」がある。日帰り入浴も可能。この酸ヶ湯温泉では、エリアマップのとおり、確かにau(mineo)はLTEの電波をつかんだが、一方のNTTドコモは3Gのみ利用可能だった。
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