ヤマハ発動機のチームエアロセプシーによる「人力飛行機での飛行距離世界記録更新」の夢は、気象条件が整わず離陸することなく断念した。5月9~11日の3日間のいずれかで記録更新を目指したが、静岡県静岡市清水区の富士川滑空場を37kgの超軽量に作り上げられた「極楽とんぼ」が120kmの記録を目指してテイクオフすることはなかった。9日は天気予報を考慮して前日のうちに飛行を見送った。10日は現地入りしたが、風の具合が思わしくなく飛行機は組み立てられなかった。そしてラストチャンスとなった11日。この日はおだやかな夜明けとなり、午前4時には組み立てが終わり、パイロット役の自転車レーサー、山本和弘のウォーミングアップも済んだ。「いよいよですね。めっちゃ緊張していますが、120kmでやめることなく飛べるとこまで行きますよ」飛行時間4時間半に必要なミネラルウォーター2リットル、エナジードリンク2リットル、栄養補助食品も最低限がセットされた。機首が海に向けられた。夜露をしのぐ主翼部のビニールが取り除かれた。しかし、山本がコクピットに乗り込むことはなかった。大記録への挑戦すらできなかった。「滑走路付近の条件はよかったものの沖合1.5km付近の風が強く、残念ながら離陸させることができなかった。今回の世界記録挑戦はこれで終了。今後の方針については、決まったら公表したい」とチームエアロセプシー。「記録更新に多くの人の期待がかかったが、その期待に対してなにもできなかったことに悔しさと虚しさが残る。でも、記録挑戦に向けて一緒に動いてきたチームのみなさんには感謝の気持ちでいっぱい」山本は気持ちを切り替えて、本業のロードレース活動に専念していくという。
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