ここでは、カール・グスタフ・ユング(Carl Gustav Jung)の「レッド・ブック」が観客を迎え入れる。これはユングが自身のファンタジーをカラフルな絵に描き、製本したもの。蛇や竜、踊る人間など、奇怪でシュールなイメージで溢れている。アルセナーレでは「自然」「宗教」「身体」「テクノロジー」など、外界との関係によって作家が作り出すイメージが順序を追って展示されているのに対し、セントラル・パビリオンでは様々な作家の内なる「潜在意識」から派生するイメージが多数混在して展示されている。
ユングに続いて、仏人作家のルネ・イシェ(Rene Iche)による、詩人アンドレ・ブルトン(Andre Breton)のデスマスク彫刻「マスク・オブ・ブルトン(Mask of Breton, 1950)」が登場。シュールレアリズムの父、ブルトンは観客を潜在意識の世界へと誘う。 ここではルドルフ・シュタイナー(Rudolf Steiner)が1920年代に描いたドローイングや、神からのお告げを受けて宗教的なペインティングを描きはじめた仏人作家、オーギュスティン・レサージュ(Augustin Lesage)などの作品も展示され、カルトと哲学とオブセッションの「グレーゾーン」にある作品達が、人間の潜在意識と強く結びついたものとしてピックアップされている。様々な作家の「集合的無意識」が散らばった会場は、ドロドロとした空気で満ちている。