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【テクニカルレポート】公共ディスプレイと利用者スマートフォンとの連携による次世代情報提示システムの開発……OKIテクニカルレビュー

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図1 公共ディスプレイとスマートフォン双方のセンサを活用した連携技術
  • 図1 公共ディスプレイとスマートフォン双方のセンサを活用した連携技術
  • 図2 利用者の気づきを誘発する情報提示技術
  • 図3 試作システムの構成
  • 図4 次世代情報提示システムの動作の様子
次世代情報提示システムの試作
 前述した提案技術を用いた次世代情報提示システムの試作について述べる。図3にシステム構成を示す。公共ディスプレイとして50インチディスプレイとスマートフォンとしてGalaxy Nexus(Samsung社)を用いた。このとき、各スマートフォンはあらかじめWi-Fi接続されているものとし、また公共ディスプレイに表示される情報コンテンツを操作するメインPCも同一のLANに接続されているものとする。さらに、公共ディスプレイ前方の距離画像を取得するためのカメラセンサとして、Kinect for Windows センサ(Microsoft社)を用いて実装した。

 図4に本システムの動作の様子を示す。利用者がスマートフォンを持ってディスプレイの前に立つところからスタートする(図4 (a))。このときスマートフォン上の専用アプリケーションは起動されているものとする。利用者は連携したいディスプレイに向かって、スマートフォンを数回振ることで、前方のディスプレイと自身のスマートフォンの連携を確立することができる。図4 (b)は、スマートフォン上のタッチパネルを操作することで、ディスプレイ上のマウスカーソルを操作している様子を示している。説明を簡便にするため、1人で操作している様子を示しているが、複数人が同時に利用することも可能である。次に図4 (c)では、ディスプレイ画面上のある興味のある情報コンテンツを選択している様子を示している。そして、興味を持ったコンテンツを自らのスマートフォンにダウンロードすることができる(図4 (d))。このように、利用者スマートフォンとの連携と利用者の気づきを誘発する情報提示によって、利用者と情報を結びつけ、自身のスマートフォンにダウンロードしてもらうなどの具体的な行動に結びつけることができる次世代情報提示システムを実装できる。


評価と考察
 本試作システムを空港ロビー向け・金融店舗向けのソリューションとして、社内外に展示する機会を得た。空港ロビーや金融店舗ロビーを想定し、公共ディスプレイに表示される情報コンテンツとして、「施設情報」、「観光情報」や「金利情報」、「投資信託」などのカテゴリから数種類ずつ用意した。空港ロビーや金融店舗ロビー内での待ち時間の際にちょうど紙のパンフレットを手に取ってもらうように、お客様は公共ディスプレイに表示する情報コンテンツの中から興味を持ったものを選択でき、手元のスマートフォンにて詳しい内容を確認することができる。このソリューションを多くの方に体験していただき、好評のコメントをいただけた。その一方で、いくつかの課題も明らかになった。あらかじめスマートフォンに専用アプリケーションをインストールしなければならない点や初めて利用するお客様や高齢者の方に操作方法が伝わりにくいといった点である。それらの解決策として HTML5を利用したウェブアプリケーションとして実現することを検討している。ブラウザ上で実現することでインストールが不要となり、利用環境に合わせた表示形態の変更(操作説明の追加や文字サイズの変更など)がサーバ側の部分的な更新で容易に対応できる。またスマートフォンの機種に依存しないマルチプラットフォーム環境を提供することができ、さらに動画や音声などに加え、既存のウェブコンテンツと親和性の高いリッチなコンテンツ表現も可能となる。このようにHTML5の導入により、本システムの価値をさらに高めることができる。

 また本試作システムの別の観点では、利用者の興味・関心の想起と利用者の行動が即座に結びついている点が重要であると考えている。利用者自らがスマートフォンを用いて、適宜情報コンテンツを検索する方法もあるが、本試作システムでは、公共ディスプレイへの情報提示によって利用者と情報を結びつけ、それら情報に対する利用者の気づきを、スマートフォンを介した具体的な行動(例えば情報のダウンロードなど)に変えることができる。これを利用して、例えばスマートフォンにダウンロードした情報を用いた店舗へのナビゲーションや、そのナビゲーション結果によって
サービスクーポンなどを提供することで、より効果的なO2Oサービスが実現できるなどの価値を提供できる。


まとめと今後の展開
 利用者の持つスマートフォンと公共ディスプレイの連携によって、利用者の状況に合わせた最適な情報を提供することで、利用者と情報を結びつけ、気づきを行動に変える次世代情報提示システムの開発について報告した。本システムを支える2つの技術について説明し、試作した結果を示した。今後の展望は、フィールド評価を通じた実験検証のフェーズと具体的な商品化に向けたシステム拡充がある。


■参考文献
1)来住晶介, 千村保文:OKIの目指すスマート社会, OKIテクニカルレビュー第219号, Vol. 79, No. 1, pp. 4-11,2012年4月.
2)Pears, N., Jackson, D.G., and Olivier, P. : Smart phone interaction with registered displays, In IEEE Pervasive Computing, Vol. 8, No. 2, pp. 14-21, 2009.
3)Ballendat, T., Marquardt, N., and Greenberg, S. :Proxemic interaction: designing for a proximity and orientation-aware environment, Proc. of ITS, pp. 121-130, 2010.
4)山口徳郎, 立澤茂, 野中雅人:モバイル端末内蔵センサと環境カメラを活用した端末ペアリング方式の提案, 信学技報, Vol. 112, No. 106, pp. 29-33, 2012.
5)北村喜文, 高本恵介, 高嶋和毅, 伊藤雄一, 横山ひとみ, Liu Gengdai, Subramanian Sriram:インタラクティブで柔軟なデジタル写真群動的表示法, インタラクション2013予稿集, pp. 40-47, 2013.
6)佐藤拓弥, 高嶋和毅, 山口徳郎, 北村喜文:インタラクティブな画像群動的表示法における印象操作性の評価, ヒューマンインタフェースシンポジウム論文集, pp. 547-552, 2012.


●著者紹介
山口徳郎:Tokuo Yamaguchi.研究開発センタ メディア処理技術研究開発部
※徳は旧字体、心の上に横線

福島寛之:Hiroyuki Fukushima.研究開発センタ メディア処理技術研究開発部

立澤茂:Shigeru Tatsuzawa.研究開発センタ メディア処理技術研究開発部


※本記事は沖電気工業株式会社より許可を得て、同社の発行する「OKIテクニカルレビュー 221号 Vol.80 No.1 (2013年5月) OKIの通信システム事業」収録の論文を転載したものである。
《RBB TODAY》
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