[取材・構成: 高浩美] 声優、演出家、作詞家などマルチに活躍する三ツ矢雄二、この3月には声優アワードの富山敬賞を受賞。声優について、アニメ作品の舞台化について自身の演劇活動について語って頂いた。■ 富山敬さんは凄く大好きな先輩、だから、富山さんのお名前がついている賞を頂くことはとても嬉しいです。第七回声優アワードで富山敬賞を受賞した三ツ矢雄二。富山敬賞は声優という職業を最も広く世の中に浸透させた男性声優に贈る賞として2008年に設立。過去には山寺宏一や古谷敏などが受賞している。富山敬は三ツ矢雄二にとっては“大先輩”。「富山敬さんは凄く大好きな先輩で、いろんな仕事場でご一緒させて頂きました。とても優しい方なんですけど、甘やかすっていう感じではなく、大きく包んでくれるような、それでいて芝居では“ここは強く言った方がいいよ”みたいに、ちゃんと言って下さる方なんですね。早くにお亡くなりになって、もの凄く悲しい思いをしました。ですから、その富山さんのお名前がついた賞を頂けるっていうことは本当に嬉しいし、このような賞を頂いたので、尊敬する富山さんのような素敵な声優さんになれればいいなぁって思います。とにかく富山さんはどんな役でもナチュラルに、ものすごく幅広い役をこなしていらっしゃって・・・。僕なんかはわりとパワーで勝負しちゃうタイプなんですけど。(富山さんは)いい意味で力が抜けていらして、だけど『宇宙船艦ヤマト』の古代進みたいな力強い役もきちんとこなされていて、どうすればああいう自然体でリアルにアニメーションに合わせて芝居が出来るんだろうって・・・見ていて非常に勉強になりました。僕も歳を取ってまいりましたので(笑)いつまでもパワーだけで勝負する訳にはいきませんから、富山さんの芝居を最近思い出して“そう言えばこんな役はこんな風にしていたなぁ”と、今はそんな感じでやっています」■ 初めて台本を書いたのが27、28歳の頃、それから劇団活動、そしてアニメミュージカル『聖闘士星矢』声優としてのキャリアの長い三ツ矢雄二、実は“演劇人”としてもキャリアが長い。演じるだけでなく、脚本や演出、マルチに活躍、そのスタートは20代。「27か28の頃ですが、戸田恵子さんとジョイントコンサートをすることになりまして・・・ジョイントするなら2人で出来ることはないかな、と。本当に短い、20~30分のオリジナルミュージカル『ジミーとジョアン』っていう作品を作ったのですが、これが初めての台本です。“ひょっとしたら自分も書けるのかもしれない”って(笑)思って、そしたら書けちゃった。それから30歳の時には田中真弓さんと一緒に“プロジェクト・レヴュー”っていう劇団を立ち上げまして、『ハイスクール・ストーリー』という作品で旗揚げ公演、書いて演出いたしました。そんな風に劇団活動をしていましたら、アニメ関係のプロデューサーさんから“SMAPっていう新人がデビューするんだけど、そのコ達向きに『聖闘士星矢』を”と。“台本はアニメも舞台もミュージカルも全部わかっている人が書かないといけないので、その台本を書いてみませんか”って言われたんです。しかも“原作をアレンジするのではなく、オリジナルストーリーで”、と・・・この”オリジナルストーリー“っていうのがね、非常に悩みました。原作を片っ端から読み始めて、それで”こんな話が面白いんじゃないかな“って思って書きました。当時、演劇雑誌『ソワレ』の原稿も書いていたので、書くことは嫌いじゃないなという意識はありました」■年中、書いています(笑)凄く楽しい作業です、自分ではファンタジーに浸れるから。三ツ矢雄二は現在、アルターエゴという劇団を主宰している。「5月に公演がありますから、それの稽古をしているんですけど、この脚本は全部自分で書いています。本当に年中、何か書いていますし、考えています。今回の舞台に水島裕さんがゲストで出演して頂くんですが、(彼のために)どんなお話がいいかな、とか考えるのが凄く楽しい作業なんですよね、ファンタジーに浸れるんで(笑)。結局、27、28の頃から始めて現在に至るまでずっと、30年以上書いているんですね。『テニスの王子様』も最初は脚本と作詞をやっていましたが、今は忙しくなって脚本が書けなくなって・・・作詞だけはいまだに続けています。『テニスの王子様』のセカンドシーズンになった時に演出の上島雪夫先生から全く前と同じではつまらないっていうお話がありまして、公演があるたびに2、3曲新たに作詞をしています。『テニスの王子様』ももちろん、原作は何度も読んでいますよ。前の台本を読んで“この曲を違うものに変えたい”っていう思いもあり、“もうひとつ上のものを書いてください”と要求されていて、それで書き直している訳でもありますから、難しい作業なんですけれども、でも書くのは好きだな、と自分でも思いながら、楽しんでやらせてもらっていますね。『テニスの王子様』も10周年、たくさんのファンに支えられて非常に長く続いているシリーズですし。こういう作品に関われて嬉しいですね」■ アニメを舞台化、演劇活動のひとつとしては底辺を広げるということにおいては凄く意義があることかつてはアニメを舞台化する、ということ自体“革命的”なニュアンスを持って迎えられていた。が、近年はアニメやゲームの舞台化はポピュラーなことになっている。「あの頃にアニメを舞台化するっていうことを決めたのは、プロデューサーが偉かったんでしょうね。そういう発想、“アニメと舞台は似ている”ってプロデューサーがおっしゃって・・・。アニメと舞台の虚構性っていうんでしょうか、それが非常に似ていることに気づいて舞台化することにした訳ですが、最初のうちは苦戦しました。銀座の博品館劇場でたくさんやりました、『少女革命ウテナ』もやりました。その後、『テニスの王子様』が大ヒットして、それからたくさんの方々がアニメ作品を舞台化する作業をしていますが、先駆者のひとりとしては非常に、単純に、今の現象は嬉しい!それを支えてくださるファンの方々・・・アニメから舞台のファンになるっていうのかな、舞台というライブのものを観てそれのファンになってくれたり、劇場に足を運ぶことの楽しさをおぼえて頂くのは大変ありがたいことです。自分の演劇活動のひとつとしては、底辺を広げるということでは凄く意義があることですね」■ 好きな空間で歌が歌えたらいい、僕達の世代は“舞台人”だから「これからやりたいことは、小説を書いてみたい、っていうのがひとつ。それから、出来れば自分の好きな歌を好きな空間で歌いたい、ライブハウスみたいな、本当にちっちゃいところでいいんで、そのふたつかな。自分の稽古場を持つという夢は叶いましたから。気に入ったところで少しでも歌ったりすることが出来たら・・・まあ、老後の楽しみ(笑)。僕達の世代の声優は役者が多いんですね。舞台やライブにこだわっていらっしゃる方は本当に多いんで、会うと“みんなで何かやりたいね”とか“舞台やりたいね”っていう話になるんです。今の若い声優さんの中には“声優”っていう枠に入っているコがいますが、声優っていう枠の中に入ってそれで成立しているなら構わないとは思います。でも、自分を刺激する、感性を豊かにするっていうのかな、実はお客様の前に自分の姿をさらけ出してお芝居するということに意味があるんだっていうことをわかってもらえたら嬉しい。歌手活動をしているアニメ声優さんもたくさんいらっしゃいますし、そういう活動を通して得るものが違ってくると。自分のビジュアルを出すことにチャレンジすると世界が2倍に広がるのにな、って思うことはあります、おじさんとして(笑)」■ 5月の公演は50回目、劇団の節目になります。今回は“グレー”な話!?「今、稽古中ですが、『シンプル・レヴュー4』4回目なんで、水島裕さんや金月真美さん等に客演で出て頂きますが、ショートストーリー6本ぐらいやります。ちょっとグレーな話が多くなっちゃったかなって気もするんですが(笑)今までの代表作の再演もあり、書き下ろしもあり・・・どんなこと、やってるのか、劇場に足を運んで頂けたら嬉しいですね」作・演出はもちろん、三ツ矢雄二、声優としての三ツ矢雄二しか知らないのはかなり損、三ツ矢雄二の舞台を観に劇場にGO!劇団アルターエゴ50回記念公演『シンプル・レヴュー4』5月8日~12日恵比寿・エコー劇場http://alterego.loops.jp/information-detailed.htmlミュージカル『テニスの王子様』10周年記念コンサートDreamLive20134月27日~29日横浜アリーナ5月3日~5日神戸ワールド記念ホールミュージカル『テニスの王子様』全国大会青学vs氷帝7月11日より東京、大阪、名古屋、福岡、仙台5都市開催決定