フランスの巨匠が、このほど来日した。『髪結いの亭主』、『仕立て屋の恋』などで知られるパトリス・ルコント監督だ。ただし、今回の目的は実写映画ではなく、最新作のアニメーション『The Suiside Shop』のためである。3月21日、東京国際アニメフェア2013の大ステージにて「巨匠パトリス・ルコント、アニメーション映画初監督最新作の全てを語る」が開催され、ここに監督が姿を見せた。作品を語るトークでは、実写映画を撮ってきたパトリス・ルコント監督がどのようにアニメーションと向き合ったの阿かに注目が集まった。「これまでも今までやってことないことに意欲を燃やして来た」と監督は話す。原作小説は知っていたが制作は不可能だと思っていたところ、プロデューサーからアニメーションで制作するようにと依頼されたという。そしてこれをすばらしいアイデアだと思ったという。「以前マンガを描いていたので、まるで水を得た魚のようだった」と語る。『The Suiside Shop』というタイトルからも分かるように、自殺に関連するグッズを販売している店の話である。これに対してパトリス・ルコント監督は「人生は素晴らしいというメッセージを送っている。ミュージカルという形態を使うことで、暗い陰鬱な内容とバランスが取れてると思う」とのことだ。トークの対談相手として登壇した朝日新聞社の小原篤記者がいくつか質問を投げかけた。最初に映像化が不可能と感じたことについて監督は「若干現実からずれているため役者を使って作る事は現実的ではない」と説明する。「実写だと暗い印象になるが、ティムバートンなら可能かも知れない」。アニメーションについては、作業のメインはアングレームで行われたという。背景美術はベルギー、キャラクター作画はカナダのモントリオールにも外注した。発注の前にとても細かい指示が出てるのでほぼ同じ物が帰ってくる、と質は問題ないそうだ。国際的な枠組みで、映画が作られているセリフについては先に録音するプレスコ方式が採られた。ミュージカル風であることもあり、声優は歌えることが条件だったが、有名な俳優を起用してしまうと映像ではなく声に関心が向いてしまうデメリットから避けられた。こうした制作の実際に多くの関心が集まったのは、アニメフェアらしい。また、ヨーロッパでのアニメーションの捉えられ方にについて、聴衆から質問に、海外でもアニメーションが子供向けだけでなく、大人にも見られるものになって来ている、時代の変化について触れた。実写も撮り終えたというパトリス・ルコント監督だが、その次回作はアニメーションになるという。 タイトルは『ミュージック』。「音楽がなくなった世界はどうなるだろう?」というのがテーマだ。こちらもシナリオを書き終えたところなので完成を楽しみに待ちたい。「これから3年かかります」とトークを終えた。『The Suiside Shop』は、9月7日からヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国でロードショーとなる。[真狩祐志]東京国際アニメフェア2013http://www.tokyoanime.jp/