1950年代から2000年代に至るまで、世界に誇る日本の映像の技として花開いたのが特撮だ。ミニチュア造形や大掛かりなセットを用いて現実にはない空間や世界を創り出す。そうした特撮の魅力を全て詰め込んだ企画展「館長 庵野秀明 特撮博物館 –ミニチュアで見る昭和平成の技-」がいよいよ7月10日から東京都現代美術館で始まる。企画展示室の広大なスペースで知られる同館の1階と地下2階を全て使ったものである。そこには特撮関連の貴重な資料、設定、原画、ミニチュアなど約500点が並べられる。特撮関連の展示としては空前の規模だ。このオープンの記者発表会が、一足早く、7月9日に美術館で行われた。会見には多数のマスコミが集まり、この企画展への関心の高さが窺われた。関心の高さは当然だろう。本作はタイトルにあるようにエヴァンゲリオンシリーズで知られる庵野秀明監督が“館長”として指揮を執り、さらに平成ガメラシリーズや『日本沈没』などの樋口真嗣監督が“副館長”として参加する。企画制作協力はスタジオジブリ/三鷹の森ジブリ美術館が担当するという日本映像界のスーパースターが集まっている。そんな華々しい中だが、庵野監督の挨拶はいたって謙虚だ。そして、今回の展覧会を「本当に大きなことだけれど、次の大きなことのための第一歩」と説明する。もともと、企画展は特撮の文化を守りたいとの庵野監督の熱い思いから始まった。「今回の企画展の最大の功労者は鈴木(敏夫)さん」と語るが、そこで生まれた機会をさらなる大きなプロジェクトにつなげたいとする。そのうえで「数字が出ないと次につながらない。是非、訪れて欲しい」と話す。特撮と企画展の魅力を熱く語る庵野秀明監督が印象的な会見だった。樋口監督は、企画展に合わせてスタジオジブリが特撮のみで制作した短編映画『巨神兵東京に現わる』の監督も務めた。技術や設備が失われつつあるなかでの制作だが、監督はかなり楽しみながら取り組んだようだ。「喜び過ぎていて、周りから仕事をしてないと思われる」と笑わせる場面も。庵野監督からは「樋口に頼んでよかった。よくここまでやってくれた。」、「ありがとう、しんちゃん」と暖かい言葉が贈られた。その映画の中に登場する巨神兵は、宮崎駿監督の代表作『風の谷のナウシカ』に由来するのは言うまでもないだろう。スタジオジブリの鈴木敏夫さんは、「自分のものが他人のものとなることを、手をたたいて喜ぶ監督はいない」と言い、今回の映画はまだ宮崎駿監督に見せてないと明かす。見せるのは、展覧会が始まった後、お盆くらい、もう後戻りが出来ない頃とのこと。宮崎駿監督の映画の感想も、今後、気になるところだ。企画展は、この後10月8日まで開催される。夏休みシーズンということもあり、往年のファンだけでなく、子どもたちからも広く人気を集めそうだ。「館長 庵野秀明 特撮博物館」 ミニチュアで見る昭和平成の技http://www.ntv.co.jp/tokusatsu/index.html 開催期間: 2012年7月10日(火)~10月8日(月・祝)開催場所: 東京都現代美術館 企画展示室1F・B2F主催: 公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都現代美術館/日本テレビ放送網/マンマユート団企画制作協力: スタジオジブリ/三鷹の森ジブリ美術館 館長: 庵野秀明 副館長: 樋口真嗣 展示コーディネート: 原口智生、西村祐次