講演のなかでクリス氏は、クラウドやスマートフォンを支えるアカマイの最新テクノロジーを3つのキーテーマで解説した。1つ目のキーテーマは、情報・エンターテインメント分野で、インターネットに接続されたデバイスとオンライン・ビデオの配信技術だ。同社は、PCやモバイルなど、さまざまなデバイス環境での接続性を担保し、HDレベルのハイクオリティ映像を届けるために、専用HDネットワークを開発。このネットワークをさらに進めると、オンデマンド配信を行う際に、単一のビデオコンテンツを分析して、それを複数の帯域と各種形式で配信できるようになるという。さらにクラウド上でP2Pを可能にすることで、ラップトップやデスクトップ、あるいはゲーム機にHDクライアントをインストールして使えるようになる。クリス氏は「このようにHDネットワークを利用すれば、ネット上で高品質なテレビ番組や映画を誰でも簡単に視聴できる」と強調した。同社では「どこでもテレビ」(Akamai Solution for TV Everywhere)という取り組みも行っている。これはケーブルTV事業者がコンテンツを制作し、それをISP経由でインターネットによって視聴者に配信しようというサービスだ。その際に、アカマイのプラットフォームでID管理やSSOなどのセキュリティを容易に実現できるという。
2つ目のキーテーマは、同社の技術がB2CのEコマースサイトにおいて、セキュリティやパフォーマンスの改善に貢献している点にある。たとえばNISSENのWebサイトは「バーチャルコーディネイトルーム」「レビュー」「カタログリンケージ」など、高度で洗練された機能が盛り込まれており、モバイル上からも安心して取引できる。しかし新技術を取り入れると、Webサイトのパフォーマンスが落ちてしまう恐れもある。消費者は2秒以上の停留を我慢できないため、パフォーマンスが落ちるとサイトから逃げてしまうという結果も出ている。アカマイの「Dynamic Site Solutions」では、B2CやB2Bでのパフォーマンスを維持・向上させ、かつECサイトで重要な個人情報やクレジット情報を守るためのセキュリティを強固にすることが可能だ。Dynamic Site Solutionsには、サイト・ディフェンダー、WAF(Webアプリケーション・ファイアウォール)、DDoS防御などの機能がサポートされ、エッジサーバやエンドポイントのセキュリティも内包している。
クリス氏は3番目のキーワードとして「B2Bにおける高度な事業展開が可能な最適クラウド・コンピューティングの配信技術」を挙げた。データセンターで提供されるサービス・プラットフォームとエンドユーザーを結びつけるクラウド・コンピューティングの構成は、一見すると単純そうに見える。しかし両者をつなぐインターネットを見れば、セキュリティ上の問題が山積し、ビジネス向けの全体最適化も行われていない。クラウド・コンピューティングで提供されるアプリケーションは、ネットワーク上でさまざまな経路によって配信される。さらにその提供形態として「SaaS」(Software as a Service)、「PaaS」(Application Platform as a Service)、「IaaS」(Infrastructure as a Service)といった方法があり、従来はローカルに置かれていた各種アプリケーション・サービスまでも共有アーキテクチャで配信されるようになってきた。クラウド・コンピューティングでは、OSやデータセンターの仮想化技術は欠かせない技術だ。だが、もう1つ重要な柱として「最適化技術」が必要だ。「特に製造系・金融系・人事系などの古いアプリケーション・サービスをクラウド・コンピューティングで実現する場合には、パフォーマンスやセキュリティ、さらには信頼性に大きな不安が生まれてしまう。そこで我々は、先進のクラウド最適化技術(ルーティング・トランスポート・アプリケーション)によって、インターネット上でもこれらが担保されるように工夫している」とクリス氏は強調する。