現在の香港でナウ&ホットな電脳ビルは、スマートフォンとGSM携帯が集まるモンコックの「先達広場」だ。「旬のうちに売り抜けるよ!」といった香港商人スピリッツあふれる場所で、中古買い取りにも意欲的である。 早速突入すると、いきなり暑苦しい人だかりだ。密集する小規模テナントはいずれもみっしりとスマホや携帯を並べ、香港のスキマ恐怖症ぶりを見事に体現している。だが、どれも値段は記されていない。実のところ香港には「モノの定価」がほぼ存在しないので、仕入れ先や売れ行きによって価格は変化する。店員が答えるのは「その時点での実勢価格」。値切りも可能だが、クレジットカードではほぼ不可能だ。現金商売は商人の基本である。 しかしまあ、改めて見るとよくもこんなに機種があるものだと思う。そして、スマホに対する心の垣根が思い切り低い。ガラケー帝国の日本より、一般人とスマホの距離が近いのだ。ちなみに、iPhoneが大人気となった理由のひとつは、「繁体字中国語の手書き入力」機能にある。香港は広東語圏のため標準中国語でのピンイン入力は皆苦手だし、広東語ピンイン入力はほとんど普及していない。「メールは英語」も多かった状況に、iPhoneの手書き入力機能が颯爽と登場したわけである。 話を先達広場に戻そう。ビル内には日本ではお目にかかれないデザインの携帯も多く、有名車メーカーの特別モデルから、スーパーカー消しゴムが巨大化したようなモデルなどに目を奪われる。前者は理解できるが、後者はネタだろう。また、地元日本ファンに向けてガラケーのSIMロック解除&中国語入力OK版の専門店も変わらず元気だ。 目移りしながら上階へ進むと、今度はなにやら物騒な言葉が書かれた手書きポスターを貼った店が増えだした……「破解」「Jailbreak」……あんたら、やっぱりそこまでやるのか。 「Jailbreak」に関する説明とメーカー側の公式見解はあえて割愛するが、要するに「やっちゃダメなこと(不正な改造)」である。それを「有料でやってあげる★」という店が最近(全アジアで)急増している。だが、実施後にトラブルが出ても、正規ルートでの修理はもちろん無理。 割れた液晶や通常の故障をフツーに修理する店も存在するが、その隣では「本体を全部透明にできる便利な取り替えケースキット」も売られていたりする。確かに便利だが、修理と改造の境界線がまるで蜃気楼のように曖昧だ。そういえば、前に香港でGSM携帯が起動しなくなったので修理に出したら、違う機種のファームウェアをぶちこまれて戻ってきたことを思い出した。 「動いてるんだからいいじゃん」と言われてつい納得してしまったが、今も変わらずそんな調子だ。そのうち「iPod/iPadに通話機能をプラスするサービス!」とか「AndroidなのにインターフェイスがiOS!」とか言い出す店も出てきそうだ。Phoneとだけ書かれた「iがない」デュアルSIM対応機も発見されたが、これは中国本土で「iPhone 4」を名乗って販売され話題(別名:クレーム)になったモデルの身内だろう。愛はどこにあるのか。 こんなフリーダムなユーザーを相手に世界の有名メーカーがしのぎを削っているかと思うと、そりゃスマホの進化スピードも早いハズだという結論に至る。ちなみに台湾の空港にある書店では、「ルート権限を取得してAndroid禁区へ入っちゃお★」というあおり文句がポップな書体で明るく踊る「あくまで一般向けの」Android解説本があった。もちろん、明るく深入りする領域ではない。 スマホは、いったいどこまで進化するのか。そしてフリーダムなユーザーたちは、いったいどこまでやらかすのか……全体的にやりすぎ感が漂う先達広場を眺めながら、「そもそもモトは『電話』だったハズなんだが」と、一回転して原点回帰する自分を感じた。昔から「過ぎたるは及ばざるがごとし」って言うじゃないですか、ねえ。
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