人間が持つ膨大なコモンセンス知識を獲得しコンピュータに与える先行研究は、主要なものとして二つある。一つはCycと呼ばれるコモンセンス知識獲得とデータベース化を合わせたプロジェクトである。もう一つは、Open Mind Common Sense(OMCS)と呼ばれるコモンセンス知識獲得プロジェクトとデータベースConceptNetを合わせたものである。本章ではそれぞれのプロジェクトについて説明する。
Open Mind Common Sense(OMCS)は、1999年にMITメディアラボによって開始されたコモンセンス知識獲得プロジェクトである。OMCS は、Cyc と異なり一般のボランティアの人々からインターネットを利用してコモンセンス知識を獲得するアプローチを取っている。獲得した知識にはノイズが含まれるが、専門家による手作業に比べて知識を速く獲得することができる。またOMCS では、複数の国と言語でコモンセンス知識を獲得している。2010年12月現在で英語のコモンセンス知識が約100万件、中国語が約35万件、ポルトガル語が約23万件、日本語が約1万件登録されている。
近年では穴埋め形式の娯楽性の低い入力に替わって、ゲームを利用した娯楽性の高いコモンセンス知識獲得が試みられている。英語についてはCommon Consensus、中国語についてはRapport GameおよびVirtual Pet Gameが報告されている。日本ではこのようなゲームを利用したコモンセンス知識獲得の試みは行われておらず、他国に比べコモンセンス知識獲得が進んでいない。