プロジェクト計画を上位マネジメントや経験豊かな識者によってレビューすることが極めて重要である。このレビューの場で、プロジェクト計画および予定しているプロジェクトコントロール方式の完成度と有効性を評価し、必要な指摘事項があればそれを指摘し、計画に問題が無ければその計画に承認を与える。問題や指摘事項が何も無いということは考えられず、潜在する問題を指摘できないレビュー者なら、それは論外である。こうしたレビューの場が、プロジェクトマネジャへの格好のOJT(On the Job Training)の場となり得るものであり、レビュー者もレビューを受ける側もこの側面を明確に意識して、レビューの場を最大限に活かすよう努めるべきである。この積み重ねにより、より精度の高いプロジェクト計画が次第に作成され、プロジェクトマネジャが育っていくことになる。明日から急によい計画を作成できるようになることなどあり得ないことである。
計画の重要性については誰しもが思い反対する人はいない。しかし、単に思っているだけではよい計画を作るために力の限り注力することにはつながらない。プロジェクト計画立案とプロジェクトコントロールとは、ISBP の主要な支柱である。計画があっての実行コントロールである。計画が無ければコントロールができず、それはあたかも俗に言う“行き当たりばったり”の状況である。そして、よい計画が無ければ、よいコントロールもできない。プロジェクトが失敗することを想像すれば、それは悲惨なものである。顧客に多大な迷惑をかけ、労力とコストの大半は泡と消え、メンバには疲労と虚無幻滅感を残すのみである。さらに後々への影響を考えればマイナス面は測り知れない。「マネジメントとは、人的資源と物的資源を、ダイナミックな組織体に結集させて、お客さまへは満足を、部下へは高いモラルと喜びを与えつつ、組織体の目的を達成させる行為である」という、かつてのL. A. アプリーによる本質的な定義を今一度かみしめたい。プロジェクトマネジャの使命の重さを自覚し、よい計画立案のために自分の限られた経験と能力に上司や経験を積んだ人の知恵を結集するよう手立てを尽くし、過去の多くの経験を基に体系づけられた方法論に加えて適切なツールの活用を図り、計画のレビューを受けて可能な限りよい計画に仕上げなければならない。その計画に基づいてプロジェクトをコントロールし、計画の恩恵に実際にあずかった人が、計画の重要さを真に知る人であると言える。単なる理解から認識に至ることが重要である。