加藤氏は同社に転職してすぐ、mAgic TVの担当になった。そしてその後、mAgic TV Digitalではデバイスの管理や番組予約を行う「mAgicマネージャ」の開発に携わることになる。「正直にいうと、前バージョンのソフトを見たとき『これなら俺が一から(ソフトを)作れば、(クオリティで)勝てる』と思っていたんです。なめていましたねえ」と振り返る。「それで、0から作り始めたんですが、実際に開発を始めたら、すぐに簡単にこれに勝つなんて絶対無理だと気づいて。『参りました!』という感じでした(笑)」。加藤氏が目の当たりにしたのはノウハウと経験の差だったという。
また、ソフト開発の面でも、経験やノウハウの差を痛感することがあったという。mAgic TVで「予約の追加と削除」機能を作り直していたときのことだ。加藤氏は独自のアルゴリズムを適用してプログラムを開発。従来バージョンよりかなり速く動作するようになったという。「それで、『よしよし、やった』と思っていたんですね。それからマルチチューナーという同時録画機能に対応するために、予約の重複がないかチェックする機能を付けていったんですが、これがうまく動かない。そこで、前のバージョンの開発担当者の方に相談に行ったら、過去のバージョンの技術をいろいろ教えてくれるんですね。そのアドバイスを受けて、『なるほど!』と作っていったんですが、『それなら最初から前のバージョンをベースに作ればよかった!』って気づいて(笑)」。加藤氏は、これを今回のmAgic TV Digitalの開発で一番あきれた出来事だと振り返る。「俺のプログラムは、ノウハウも知らずに、ただ速ければいいだろうという感じで作っていただけ。やっぱり長く続いているソフトには、それだけのノウハウが活かされているんですね」。