最後に同氏は、エンタープライズ・クライアントのモデルについて言及した。現在のエンタープライズ・クライアントは、セキュリティとTCOの面で有利で複雑性も軽減できる「シン・クライアント」か、生産性に優れ、リッチなユーザー経験を可能にし、モビリティも確保された「シック・クライアント」か、という二者択一の状態にあるように見える。しかし同氏は、新たな解として、ソフトウェアが“SaaS”(Software as a Service:サービスとしてのソフトウェア)の方向に移行していくことを前提に、“SaaS Enabled Client”というものが考えられるとした。ソフトウェアをクライアントにインストールすることなく、AJAXなどの技法を使ったリッチなアプリケーションをユーザーに提供するSaaSに対応するには、フル機能を備えたWebブラウザや、今後利用の拡大が想定されるストリーミング・メディアに対応できる処理能力を備えたPCの利用が有利だ。また、従来のPC(シック・クライアント)の弱点とされた管理の煩雑さやセキュリティの問題は、アプリケーションやデータをサーバ側で管理するSaaSのアプローチであれば解消されることになる。IntelがSaaSに言及するとは想定外ではあったが、クライアントPCの機能強化を続ける一方で企業が求めるTCO削減やセキュリティ向上を実現するために、クライアントPC側だけの改良ではなく、利用モデルの変化も必要となっているという認識を示したものと理解して良さそうだ。
《渡邉利和》