ブロードバンド接続が増えるにつれて、店舗の中にはADSLやFTTHが入り込んでいる。また、宿泊施設や飲食店では、利用者サービスのために無線LANサービスを提供するケースも増えており、インターネットは本当に身近なものになっている。 ところが、こうしたばらばらのネットワークはばらばらのまま動いており、地域としてネットワークを連携させるような流れは作り出されていない。そこに着目して、ネットワークを有効に使おうというものが出町ネットワークだ。 出町ネットワークは、出町商店街の各店舗がばらばらに接続しているネットワークはそのままに、商店街の方々にVPNクライアントソフトを導入してもらうことで、各自のネットワークからセキュリティに守られたグループウェアを使えるようにしようというコンセプトだ。このコンセプトは、こんなイメージを描くといい。「店先のレジの横に無線LANで接続したノートPCから、店主がグループウェアにアクセスした」。この場合、何がおきるかというと、セキュリティ対策を施さないと通信している内容を近所の人が受信でき、個人情報が漏れたという話にもなりかねない。かといって、無線LANの設定はむずかしい。それならどうするか。OSが標準で持つVPNを設定してもらえれば、通信インフラが無線LANでも安全な通信が実現できる。そこで、商店街全体にVPNを導入して、商店街全体でグループウェアを使ってもらって掲示板や会合スケジュールを参照できるようにしようというものだ。 出町ネットワークは、まさにこのコンセプトで発想されたものだ。ただ、VPNが構築されるのであれば、その使い道はグループウェアだけでとどまるものではない。今後さらに使い道は広がっていくことは予想できる。たとえばエリア全体で無線LAN化が進めば、商店街のどこからでもノートPCでインターネットに安心につなげられたり、各店舗がVPNを張ったネットワーク上にIP電話を導入すれば、店舗間で内線電話も実現する。 出町ネットワークのキーワードは、まさに「ネットワークを安全に楽しむ」ことだ。この安全で地域密着型のネットワークの中で、グループウェアのサービスの次に何を提供するのか。次の一手に着目したい。