いずれにしても、次のステップはこの衛星を無事に軌道に乗せることで、それが完了次第、細かな調整をしながら試験サービスへの突入となるもようだ。放送を受信するには、どんなものが必要なのだろうか。
「受信端末としては、持ち運べる携帯端末やカーナビに取り付けられるような専用端末が登場してくるでしょう。当初はそうした専用端末ですが、携帯電話やPDA、デジタルカメラといった液晶画面のあるあらゆるものを受信端末にしていきたい。それがモバイル放送のめざしている形」
という。今月実施されたWPC Expoでも、いくつもの会社がモバイル放送対応端末のコンセプトモデルとして端末を展示していたが、いずれもモバイルや車載をイメージしたものになっている。
「通勤電車の中では、新聞の代わりに携帯電話やPDAの液晶画面で放送を見たり聞いたりする姿が見受けられるかもしれません」(末永氏)
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ミノルタがWPCエキスポで展示していたモバイル放送端末のコンセプトモデル |
次世代ではコミュニケーションツールに成長する可能性も
専用端末だけではなく、携帯電話やPDAでも放送が受信できるようになる。モバイル放送のめざす世界はそんな世界だ。そこにいたるまでにはもう少し時間が必要だが、いろいろな機器に搭載されることで、放送自体も新たな成長過程に突入する可能性がある。末永氏が取り上げた例は、
「かつてポケベルも女子高生が思わぬ使い方をして変化していった。だからこそ、モバイル放送の仕組みも技術・制度(レギュレーション)
的にもフレキシブルに変えられるような仕組みになっている。利用者には思わぬ使い方をしてもらって新たな成長につなげていきたい」(末永氏)
特に、携帯電話の組み合わせは、モバイル放送と共に衛星を共同保有するSKテレコムがもっとも得意とする部分だ。
「時間つぶしに携帯電話で放送を眺めるようになるかもしれない。携帯電話で動画を見るとなると、これまではパケット課金でとてつもない利用料金を支払っていた。しかし、モバイル放送対応端末なら月額固定の金額」
だという。逆に月額固定であれば、使えば使うほどお得感がある。また、衛星放送インフラを使って番組を流すモバイル放送は、利用者がどんなに増えようとダウンストリームのネットワークに問題は発生しない。むしろ、携帯電話と放送の融合がおこることで、真の双方向コミュニケーションツールに成長する可能性もある。この流れは見逃せない。
モバイル放送の一般向け放送開始は来年を予定し、本サービスは2005年を予定している。サービス開始以降、ユーザがどんなにおどろくような使い方をするのか。それを待ちたいところだ。
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サービスもインフラも柔軟に対応できる仕組み。おもしろい使い方が出てくるかもしれない |
※文中の引用コメントはモバイル放送取締役の末永雅士氏