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ヒューマンドラマに恋愛物語にノワール!ヒーローもの韓国ドラマ『ムービング』が熱い

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ヒューマンドラマに恋愛物語にノワール!ヒーローもの韓国ドラマ『ムービング』が熱い
  • ヒューマンドラマに恋愛物語にノワール!ヒーローもの韓国ドラマ『ムービング』が熱い
  • ヒスが転校した理由は、いじめを看過できず不良と喧嘩をしたからだった。
  • 最年少工員としてデビュー戦でやらかし、事務員に転向させられたミヒョン。
  • 組織のトップ要員“ブラック”だが、好きな人の前ではスマートに振る舞えないドゥシク。
  • 痛みは感じるが驚異的な再生能力があるため、“怪物”扱いされるジュウォン。
 超能力者である親子たちが迫り来る悪や危険に立ち向かう物語を描く韓国ドラマ『ムービング』(ディズニープラス スターにて独占配信中)が、ドラマ好きの間で話題を集めている。全20話中初回7話が一挙配信され、その後は毎週水曜日に2話ずつ配信。8月23日の時点で11話まで公開された。さて、『ムービング』がここまで支持されるのはなぜか?(以下、ネタバレあり)

■筆者プロフィール
山根由佳
執筆・編集・校正・写真家のマネージャーなど何足もの草鞋を履くフリーライター。洋画・海外ドラマ・韓国ドラマの熱狂的ウォッチャー。観たい作品数に対して時間が圧倒的に足りないことが悩み。ホラー、コメディ、サスペンス、ヒューマンドラマが好き。X(Twitter):@ymndayo


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『HEROES/ヒーローズ』を彷彿とさせる空気感


 能力者ものの映画やドラマは、マーベルやDCコミックスを原作とした作品を筆頭に、特に近年、世界的に人気を博しているエンタメコンテンツである。あらすじとしては、何らかのきっかけでスーパーパワーを持った者たちが、カラータイツ姿の小悪党から世界の終わりをもたらす宇宙人に至るまで、時には孤独に、時には仲間たちと協力して様々な悪事を食い止めるべき戦うというものが多い。キャラクターたちは象徴的なコスチュームに身を包み、動体視力を試されるような派手なアクションシーンも盛りだくさんだ。

 『ムービング』も4話までを見たところで、トム・ホランド版『スパイダーマン』や『ミズ・マーベル』のように青春模様を織り交ぜたヒーローものとして展開されていくのではないかと思ったが、5話目以降、その印象が変わる。頭をよぎったのは、2006年から2010年、2015年に放送されていた『HEROES/ヒーローズ』。世界各地、全く繋がりのない平凡な人々が急にスーパーパワーを身につけ、悪と戦うため協力しあうようになるというアメリカのドラマだ。当時夢中になったのは、「なぜ彼らに能力が身についたのか」「悪の目的は」といった謎解き要素だけでなく、能力者たちを地に足の着いた“普通の人々”として心情を丁寧に描き出しており、共感を誘う場面も多かったからだ。

 同じく様々な能力者たちが登場する『ムービング』も、5話目からは物語の展開がぐっと緩やかになり、回想シーンの尺多めに、各キャラクターたちについて深く掘り下げている。5話目は校内のいじめ黙認に耐えきれずに立ち上がったことで転校する羽目になったチャン・ヒス(コ・ユンジョン)、6話目はタレント業から落ちぶれるがバス運転手として重宝されるようになったゲド(チャ・テヒョン)、7話目は人間兵器として育てられたフランク(リュ・スンボム)。フランクのみ特殊だが、ヒスやゲドの経験は、私たちの人生でもあり得る出来事が描かれており、彼らの存在を身近に感じられる。

ヒスが転校した理由は、いじめを看過できず不良と喧嘩をしたからだった。/『ムービング』ディズニープラス スターにて独占配信中(全20話/初回7話まで一挙配信、8話以降は毎週水曜2話ずつ配信)© 2023 Disney and its related entities


 各配信サービスが登録者数の奪い合いにしのぎを削る中、莫大な予算を投下した目玉コンテンツであるヒーロー作品は、最後まで視聴させるためにスピード感を重視し、粗のある内容を視覚的効果でカバーしているように感じることもあるしばしば。対して、『ムービング』が打ち出すテンポは、とても心地良く感じる。

韓ドラと言えば、やはり“ラブストーリー”が強い


 そして、8話から11話までは各2話ずつの構成で、親世代の能力者たちの背景が描かれる。8話、9話はキム・ボンソク(イ・ジョンハ)の母ミヒョン(ハン・ヒョジュ)とボンソクの父キム・ドゥシク(チョ・インソン)がどのように出会い、恋に落ちたか。10話、11話はヒスの父チャン・ジュウォン(リュ・スンリョン)がどのような人生を歩み、最愛の人と出会ったか。そう、韓国ドラマの代名詞とも言ってもいい、“ロマンス”に振り切っている。

デビュー戦でやらかし、事務員に転向させられたミヒョン。/『ムービング』ディズニープラス スターにて独占配信中(全20話/初回7話まで一挙配信、8話以降は毎週水曜2話ずつ配信)© 2023 Disney and its related entities


 90年代、組織の事務員として働くミヒョンは秘密の仕事の一環としてドゥシクに近づく。実は、ミヒョンに命令を下した上司の狙いは、ミヒョンをドゥシクの人質にすること。過去、ミヒョンが最年少工作員としてデビューした現場で、狙撃銃を構えていたドゥシクがミヒョンの考えを尊重して作戦失敗に至ったことから、ドゥシクがミヒョンに惚れていると踏んでいたのだ。

 その思惑は当たり、ドゥシク本人には早々とバレてしまうが、2人は作戦が上手くいっているよう見せかけることを言い訳に、互いに心を許していく。デート先は、南山とんかつ屋。「出前もあればいいのに」と言うミヒョンのため、深夜残業をしている彼女のもとにドゥシクは同店のとんかつもデリバリーする。普段は冷静で寡黙だが、ミヒョンの前ではつい冗談を飛ばして空回りするドゥシクが微笑ましい。「春がきた」とニヤニヤするお邪魔虫ジュウォンと同じ気持ちで、オフィスラブにときめく。

組織のトップ要員“ブラック”だが、好きな人の前ではスマートに振る舞えないドゥシク。/『ムービング』ディズニープラス スターにて独占配信中(全20話/初回7話まで一挙配信、8話以降は毎週水曜2話ずつ配信)© 2023 Disney and its related entities


 それより少し前の話。ジュウォンは持ち前の再生能力を活用し、暴力団の一員として生きていた。暮らしているのは、チケット喫茶(出張売春)の女性が出入りする安宿。その廊下で度々すれ違って顔見知りになり、道に迷っていたところを助けてくれたファン・ジヒ(クァク・ソニョン)が気になるように。そんな中、信頼を寄せていた兄貴分、慕ってくれる弟分に裏切られ、追われる身になってしまう。打ちひしがれ号泣した時に慰めてくれたジヒをすっかり好きになってしまったジュウォン。ただ会いたいからと貯金を切り崩してジヒを指名し、2人は他愛のない話をしながら仲良くなる。しかし、とある事件で潜伏場所がバレ、ジュウォンを殺るため定宿に集まる輩たち。いつもの宿は血に染まり、逃亡を助けたジヒもピンチに陥る。

痛みは感じるが驚異的な再生能力があるため、“怪物”扱いされるジュウォン。/『ムービング』ディズニープラス スターにて独占配信中(全20話/初回7話まで一挙配信、8話以降は毎週水曜2話ずつ配信)© 2023 Disney and its related entities


 ジュウォンにフォーカスを当てた回は、切る・刺す・締める・落とす・轢くなど何でもありのバイオレンスシーンてんこ盛り、血糊がどす黒く映るコントラスト強めの色味に重低音の効いた不穏なBGNと、「これぞ韓国ノワール!」といった映像が繰り広げられる。しかし、軸にある恋愛物語は何ともロマンチック。髭を剃り髪型を七三分けに整え、ジヒが現れるまで指名をし続け、いざ現れても全く手出しはしない紳士的なジュウォン。彼女が危機に陥った時の、内から湧き出る強さとのギャップに痺れる。また、テレビでプロレス番組を見ながら「ハルク・ホーガンは必ず勝つ」ということ、転じて「ハルク(善人)は必ず勝つ」という話になり、ジュウォンがハルクというあだ名になっていくのも、ヒーローもの好きとして嬉しい。

 ここで冒頭の話に戻る。『ムービング』は、これまで同国が培ってきた、人生/恋愛物語を紡ぐ確かな描写力、圧巻の韓国ノワールの世界観に加え、人気のヒーローものを掛け合わせ、大きなスケールで描いている作品だ。『ムービング』がここまで支持されるのはなぜか? それは、Kコンテンツに熱狂する世界が、今まさに求めていた作品だからなのではないだろうか。

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《山根由佳》
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