1月6日に放送された「ABEMA」のニュース番組『ABEMA Prime』にて、事件や事故、災害における犠牲者の人となりを美談として伝える“美談報道”の問題が取り上げられた。
今回俎上に載せられたのは、2012年に大阪で起きた水難事故のケースだ。川で溺れていた3人の中学生を、通りがかりの男性が発見。救助しようと川に飛び込んだところ、中学生のうち2人が助かったものの、中学生1人と川に入った男性の2人が死亡する結果となった。
この事故は各メディアで扱われたが、再発防止策や救助のあり方などの報道は少なく、多くは「責任感の強い人」「勇敢」などと、救助するために命を失った男性の行動を讃えるニュースとなっていた。番組で亡くなった男性の妻を取材したところ、彼女は「再発防止に報道をつなげて欲しかったが、人となりばかりがフューチャーされ、夫の死は美談として消費されたと感じた」と当時を振り返った。
番組MCを務めるプロスケーターの安藤美姫は、「起きたことの事実を伝え、2度と同じことが起こらないように伝える報道だけでいいと思う」とコメント。
また、安藤自身が報道に対して疑問を抱いた出来事を振り返り、「私は小学生の頃に父を事故で亡くしているが、18歳で五輪に出場することが決まると、『お父様が亡くなられていると聞きました。お父様のために滑られるんですよね?』『どういう気持ちを捧げますか?』と記者会見で質問を受けた。父のことは五輪の舞台とは無関係なのに、このことをどういうストーリーにしたいの?と心に引っかかった。そして、父のためにスケートをやっていたわけではないので、『事故を蒸し返された』と感じた」と打ち明けた。そしてその上で、「遺族の気持ちを考えると、人の死を美談にして欲しくないと思う」という考えを述べた。