今回はこうしたキャラクターたちに焦点を当ててみたい。(以下、物語の結末にふれるネタバレあり)
あらすじ:
母子家庭で育ったムン・ドンウン(ソン・ヘギョ、高校時代:チョン・ジソ)は、金持ちのパク・ヨンジン(イム・ジヨン、高校時代:シン・イェウン)らから激しいいじめを受け、生涯癒えることのない心の傷を負った。生きることに絶望していたが、ヨンジンら加害者5人に復讐することを生きる力にして教師になる。
時は流れ18年後、長年温めてきた復讐を実行するときがやってきた。形成外科医のチュ・ヨジョン(イ・ドヒョン)、夫からDVを受けているカン・ヒョンナム(ヨム・ヘラン)の力を借りて、5人を攻撃していくドンウン。ヨンジンから反撃を受けながらも、じわじわと復讐を果たしていく。
登場人物
ムン・ドンウン(ソン・ヘギョ、高校時代:チョン・ジソ)
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本作の主人公。高校時代に壮絶ないじめに合う。いじめにより負ったやけどの傷が体中に残っている。自分をいじめた加害者たちに復讐するべく、18年間かけて準備を進める。
チュ・ヨジョン(イ・ドヒョン)
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形成外科医で、ドンウンの協力者で囲碁を教える。病院長の息子として生まれ不自由のない生活をしてきたが、父親が患者に殺されるという悲しい過去がある。
パク・ヨンジン(イム・ジヨン、高校時代:シン・イェウン)
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ドンウンをいじめた中心人物。親が金持ちであることを盾にやりたい放題の女性。気象キャスターとなり金持ちのハ・ドヨンと結婚。一人娘・イェソルに恵まれ順風満帆な人生を送っている。
カン・ヒョンナム(ヨム・ヘラン)
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ドンウンの同志。DV夫に虐げられる日々を送っている。ドンウンに夫を殺してくれるなら復讐に協力するともちかける。
ハ・ドヨン(チョン・ソンイル)
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ヨンジンの夫。建設会社の社長。金も地位もあるが、ヨンジンの過去を知ることでかつてない大きな壁にぶち当たる。
チョン・ジェジュン(パク・ソンフン、高校時代:ソン・ビョングン)
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ヨンジンとともにドンウンをいじめていた加害者。金持ちの親に寄生する典型的なドラ息子。キレると手に負えない。色覚異常を患っている。
イ・サラ(キム・ヒオラ、高校時代:ペ・カンヒ)
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ヨンジンの仲間で、ドンウンをいじめていた加害者。画家として活動しているが、薬物に依存する堕落した生活を送っている。
チェ・へジョン(チャ・ジュヨン、高校時代:ソン・ジウ)
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ヨンジンの仲間で、ドンウンをいじめていた加害者。裕福な家の生まれではないため、ヨンジンとサラにバカにされている。客室乗務員になったのは玉の輿に乗るため。
ソン・ミョンオ(キム・ゴヌ、高校時代:ソ・ウヒョク)
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ヨンジンの仲間で、ドンウンをいじめていた加害者。へジョンと同じく裕福な家の生まれではないため、大人になってもジェジュンのパシリをやらされている。
イ・ドヒョン、自身の闇を隠し、ひたすら明るいキャラに徹する
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パート2でもイ・ドヒョンの演技は輝いていた。
実の父を死刑囚であるカン・ヨンチョン(イ・ムセン)に殺され、心に深い傷を負ったヨジョンだが、ドンウンのために力を尽くし、復讐を手伝った。
いつも明るく陽気にドンウンに接し、自らの傷にふたをしているような男気にグッときた人も多いだろう。そしてミョンオの遺体にメスを入れる際、これからまさに剣舞を踊る処刑人になるという時に「レッツ、ダンス!」とおどける姿がなんともキュートだった。
しかし今回の見どころはなんといっても16話で聞けるドヒョンの歌声だ。復讐を果たし、ドンウンに誘われるがまま冬の海を見に車を走らせるヨジョン。「助手席から見る僕の横顔は最高」とドンウンにアピール。そして「歌を歌って」とせがむドンウンのために、全力で歌を歌う。これがなかなかの美声なのだ。
そして海に着き、雪が舞い散る中二人でビールを飲みながらヨジョンは歌い続ける。それはまるでドンウンに別れの言葉を言わせないようにしているようにも見えるのだが、努力もむなしくドンウンは、さようならを言って去ってしまった。
そして半年後、突然ドンウンが現れヨジョンに愛を告げた。突然消えてしまったドンウンに怒りをぶつけながらも、ドンウンにキスをされすべて許してしまうヨジョン。そんな彼の純粋な愛に胸がキュンとなった。
ヨジョンの復讐劇は、最終話となる16話で集中的に描かれることになる。ヨジョンの母親いわく「けだもの」のカン・ヨンチョンは「医師であるヨジョンに、私は殺せない」とたかをくくっていたが「医師が救うのは人間。獣を救うなら獣医師になっていた」とヨジョンが言い返すシーンは、緊迫感のある良いシーンとなった。
個人的には、どのようにヨンチョンを成敗したのか見てみたかったが、明らかにしなかったのは、この物語がまだ終わっていないことを示唆しているのだろうか…。
大人の男性の魅力をふりまくチョン・ソンイル
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ヨンジンの夫で、ジェピョン建設代表のハ・ドヨンを演じたチョン・ソンイルは、今作で大人の男性の魅力をいかんなく発揮した。
ソンイルは、エリートサラリーマンを演じることが多く、どこか冷たい雰囲気の役が多い印象がある。今作のドヨンも似たような感じかと思ったが、パート2では激しい部分もしっかりと見せた。
ヨンジンが、イェソルの本当の父親がジェジュンであることをドヨンが知っているのか腹を探ろうとするシーンで「君は自分のことばかりだ。娘のことを考えたことはあるのか!」と一喝するシーンがあったが、この瞬間、ドヨンがまともな人間であることにホッとした。
そしてドヨンは、実の娘ではないと知りながら最後までイェソルを守ることに全力を尽くした。母親の醜聞のために学校で居場所のなかったイェソルを迎えに行き、ギュッと抱き締めるシーンに涙がこぼれる。
一生懸命父親に対して謝るイェソルに「イェソルは何も悪くない」と言って聞かせるのは、優しい父親そのものだった。
また、一人の男性として、ドヨンはドンウンに心を寄せていたのだろう。イェソルと一緒にイギリス行きを決意してから、ドンウンと初めて会ったコンビニで、おにぎりを口にするところは、哀愁漂う悲しい一人の男を表現する名シーンとなった。
悪の3人娘たちの怪演、とどまるところを知らず
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そしてなんといってもいじめの加害者、ヨンジン、サラ、へジョンの怪演ぶりは、パート1をはるかに超えてきた。この「悪の3人娘」たちは、あまりにも強烈な印象を残したため、余計なお世話だが今後の女優人生は大丈夫だろうか…と思ってしまったぐらいだ。
ヨンジンを演じたイム・ジヨンは、最後の最後まで反省をせず、自分本位な女性だった。一人娘のイェソルのことは大切にしているかと思ったが、結局のところ自分の過去の醜聞が公になってもイェソルを守ろうとせず、自分の身を守ることばかり考える母親だった。
高校時代にユン・ソヒ、そしてミョンオの2人を殺害したことで刑務所に入れられ、面会に訪れたドンウンに「殺してやる!このアマ!」と悪態をつく姿は救いようがない。
それはサラを演じるキム・ヒオラ、ヘジョンを演じるチャ・ジュヨンも同じだった。
薬物中毒となり幻覚を見る姿を官能的に熱演するヒオラ、ヨンジンと言い争いになったへジョンがシャツを脱いでたたきつけるシーンで、ジュヨンは裸体を披露。こうした2人の体当たりの演技は見事なものだったが、3人がお互いを刺しつ刺されつするおぞましさに、背筋が凍る思いになった。
命がけて娘を守る母を演じるヨム・ヘラン
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DV夫から逃れるために、ドンウンに協力をしたヒョンナム。最初はおどおどしていたが、運転とカメラの腕を上げ、ドンウンの復讐を果たすのになくてはならない存在となった。
そんなヒョンナムの夫は、あっけなくヨンジンの母親が運転する車で引き殺されてしまった。これもドンウンの計画のうちだっただろうが、ヒョンナムは夫の死を知らされ、号泣する。
彼女の涙は何を意味するのか、見る人によって意見は分かれるだろうが、ヒョンナムという人はもともと夫を愛していたのだろう。葬式で「私を許さないで」と言っていたように、失ったものの大きさと、こうせざるを得なかった自身の運命に涙が出たのかもしれない。
そして最後、ヨンジンに平手打ちをし「母親のくせによく子どもをだしにできるね!!」と啖呵を切ったところは、ヒョンナムを演じるヘランの最大の見せ場だった。「よく言ってくれた!!」と拍手をした人もいるだろう。
娘と別れ、たった一人で惣菜店を営んで生活をしていくことになったヒョンナム。しかしヨジョンの復讐を手伝うため、ドンウンから再び招集がかかった時の生き生きとした表情を見ていると、これからもドンウンと2人で悪を成敗していってほしいと、ひそかに期待してしまった。
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■筆者プロフィール
咲田真菜
舞台・映画・韓国ドラマの執筆を手掛けるフリーライター。映画『コーラスライン』でミュージカルに魅了され、あらゆる舞台を鑑賞。『冬のソナタ』で韓国ドラマにハマって以来見続け、その流れで韓国映画、韓国ミュージカルにも注目するようになる。好きなジャンルはラブコメ、ファンタジー、法廷もの。ドロドロした愛憎劇は苦手。好きな俳優はイ・ビョンホン、イ・ジョンジェ、ヒョンビン、キム・ドンウク、チャン・ギヨン。いつか字幕なしで鑑賞したいと韓国語を勉強中。