愛媛県でも人的被害のほか、住家被害や土砂災害、河川被害等が多数発生し、農林水産業も大ダメージを受けた。しかし、地元の人々の努力やボランティア協力もあり、復旧・復興への道を少しずつだが着実に歩いている。今回はそんな愛媛県南予地域(西予市・大洲市・宇和島市)の“今”を伝えるとともに、ぜひ訪れてほしいおすすめスポットを紹介する。
東京から愛媛まで、1時間半のフライトを終えて降り立った松山空港では、愛媛の象徴「みかん」のジュースと水道の蛇口が合体した「蛇口からみかんジュース」がお出迎え。コップ1杯350円で、どこまで注ぐかは自分次第!旅の疲れをなみなみ注いだフレッシュなみかんジュースで吹き飛ばそう。
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ツアー初日、最初に訪れるスポットは西予市にある「丸太山魚」。鍾乳洞から湧き出る全国名水百選の「観音水」を使い、サケ科の魚・アマゴの完全養殖を親子2代、48年にわたって行っている。災害によって15~16万匹中12~13万匹が大量死したが、その苦難をクラウドファンディングや補助金の申請によって乗り越え、養殖場は少しずつ再建した。この日は、近くにある「名水亭」で、地元の老人クラブが中心となって期間限定で行われる「観音水そうめん流し」と「アマゴの塩焼き」をいただく。頭から骨までペロリと食べられる柔らかさには驚きだ。
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旧宇和島街道の宿場町として栄えた卯之町では、老舗旅館や造り酒屋などが並ぶ町並みを散策。明治15年に建造された伝統的な日本建築に洋風要素を含んだ「開明学校」は、西日本で最も古い小学校校舎で国の重要文化財でもある。向上心に燃える地元の人々によって自発的に建てられた私塾「申義堂」も隣接しており、当時の教育にかける人々の思いが感じられる。ちなみに「開明学校」ではスタッフが先生役を務め、当時の授業を体験することもできる。
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宇和盆地の高台にある「宇和米博物館」は、旧宇和町小学校校舎を移転し、オフィスやレンタルスペース、カフェとしてリノベーションし、新たな学び舎として活用されている。遊び心もあり、109mの廊下ではレース形式の「ぞうけんがけ体験」を実施。歴代最速タイムは男性18秒17、女性24秒24。「たかがぞうきんがけ」とあなどるなかれ。スルスル滑る廊下に転倒者続出!走れども走れども届かないゴールに休憩者続出!想像以上にエキサイトするので、ぜひチャレンジを!
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大洲市では、国造りに尽力し、医薬・豊穣・健康の神とされるスクナビコナを祀る「少彦名神社」を参拝。市街地から離れた山の中にひっそり佇んでおり、神秘的なパワーとマイナスイオンを浴びながら拝殿へ。参道の途中に現れる、京都の清水寺でもおなじみの「懸造り」と呼ばれる建築様式で、山の急斜面に三方懸け造りで建てられた「参籠殿」は圧巻の様相。床面積の約9割にあたる部分が山崖に迫り出しているため、その保全・修復には多大な時間と費用がかるが、その活動が認められ「ユネスコアジア太平洋文化遺産保全賞」の2016年最優秀賞にも選ばれている。空中に浮かぶ楼閣は一見の価値がある。
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この日の宿は「大洲市交流促進センター鹿野川荘」。肱川の氾濫により大きな被害に遭い、営業不可と判断したあとは避難所として開放したため、約500名の予約を取り消し、売り上げは通常の10%に落ち込んだこともあった。だが、昨年10月に開放感あふれる露天風呂の完成と同時にリニューアルオープン。自慢は“美肌湯”ともいわれるph10のアルカリ性の強い天然温泉と、ご当地グルメ。夕食は、そのままでも、出汁をかけても美味しい、豚バラ肉と県内生産量第1位の栗を乗せたご飯「とんくりまぶし」のほか、アマゴのお造りや天ぷら、よもぎうどん、地酒の飲み比べなど、絶品料理の数々を堪能する。
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![大洲市交流促進センター鹿野川荘/いわな(あまご)寿司セット[肱川]【画像:錦怜那】](https://www.rbbtoday.com/imgs/zoom/642023.jpg)
ツアー二日目は「道の駅 清流の里ひじかわ」からスタート。施設の裏を肱川が流れていることから氾濫による浸水被害に遭い、7000~7500万円の修繕費用がかかったが少しずつ営業を再開し、現在は「肱川ラーメン」や最中など、豊富にそろえた特産品を販売。直売所では、肱川名産の水耕栽培のトマトやシイタケ、ユズなどの柑橘のほか、さまざまな新鮮野菜がまとめ買いしたいほどの低価格で売られている。
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宇和島市吉田町の漁港では、愛媛の特産品“じゃこ天”の製造・販売を行う「はるちゃん天ぷら」へ。平均年齢70歳の女性5人で毎日、無添加にこだわったじゃこ天を400~500枚を手作りしている。浸水の被害から工場が復旧したあとはクラウドファンディングなどの支援を受けながら、冷凍しても美味しいじゃこ天を開発。つなぎにでんぷんではなくイカを使用することで冷めても硬くならず、海の幸の旨味が凝縮した味わいと、プリップリの歯ごたえある弾力が楽しめる。
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昼食は「ハイウェイレストラン宇和島」で、いけすから揚げたてのタイの刺身を特製ダレに絡め、ご飯の上に乗せて食べる「宇和島鯛めし」のほか、湯通ししたふかを酢味噌で味わう「ふかの湯ざらし」、こんにゃくを使った鮮やかな色合いの祝いの料理「ふくめん」、アコヤ貝の貝柱のバター焼きなど、郷土料理に舌鼓を打つ。隣接した「真珠会館」では、生産量と美しさが日本一と謳われる宇和島真珠のアクセサリーを見て回る。お土産・思いで作りにぴったりのオリジナルアクセサリーを低価格で作ることもできる。
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国登録有形文化財に指定されている明治15年創業の「旭合名会社醤油醸造場」。豪雨災害で建屋や機械ともに被災したが、今年5月から製造できるものから営業を少しずつ再開。4代目夫婦が伝統を守りながら新しい試みにも取り組んでおり、試行錯誤の末に商品化した「ふりかけポンズ」は「全国ふりかけグランプリ2015」ソフト部門にて銅賞に輝いた逸品。ご主人の実家が栽培するブラッドオレンジを使った100%ジュースや「ブラッドオレンジポン酢」などもこれから話題になりそうだ。
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創業150年の老舗鮮魚店「河合太刀魚巻店」では、4代目女主人の軽快なおしゃべりを楽しみながら、1987年に誕生した元祖「太刀魚巻」と「アジスリミコロッケ」を食する。毎日市場から仕入れる新鮮な太刀魚を竹にぐるぐる巻きつけ、秘伝のタレを絡めて炭火でこんがり焼いた逸品はビールが進むおいしさだ。
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ツアー最後は日本有数のみかん産地・宇和島市吉田町玉津地区の吉田町玉津みかん農家へ。災害により傾斜地に位置するみかん畑が崩れたり、畑に土砂が流れ込むなどして畑の約2割が被災し、現在も手つかずの畑や農道があり、元の姿を取り戻すにはまだまだ時間がかかりそう。新たに植えたみかんの木から収穫するまでにも5年の年月を要すというから、復旧には長期的構想が必要だ。そんな中、みかん産業を次世代につなげるため、40歳代以下の若手農家12人が「玉津柑橘倶楽部」を結成し、懸命に再建に尽力している。
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愛媛の県民性として「我慢しがち」と話していた現地スタッフ。その言葉通り、今回訪れた場所では自分たちだけで頑張ろうとして、クラウドファンディングや資金援助に頼ることを「申し訳ない」と語る人たちもいた。だが、「助け合い」こそが日本人の精神であり、海と山に囲まれた風光明媚な愛媛県には、守るべき自然や歴史、農産物、そして震災に負けずに歩み続ける人々の笑顔があふれている。その地を訪れ、観光やグルメを楽しむだけでも助けになるのだ。これを機会に愛媛に足を延ばしてみてはいかがだろうか。
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