デザイナーが新しいiPadで絵を描いてみた
Apple Pencilで「絵を描く」ことについては筆者はプロとして多くを語れる技量を持ち合わせていないので、グラフィックデザイナーの平川珠希氏に協力を仰いだ。平川氏は日ごろからiPad Pro 9.7インチとApple Pencilをデザインのラフスケッチやイラストの制作に活用している。今回はiPad対応のペイントツールアプリ「Clip Studio Paint」を使って、それぞれのiPadでイラストを描いてもらった。

iPad Proを購入した決め手は、Apple Pencilによる描き味がまるで紙に描いているみたいにリアルだったからという平川氏。新しい9.7インチiPadも、Apple Pencilによる筆運びはiPad Proに引けを取らない高い追随精度に満足したようだ。
ペン先の動きに対する反応は「吸い付いてくる」ようなiPad Proに対して、新しいiPadは比べると「より軽やか」に感じられるという。そのためか、はじめのうちはイラストの主線を描く際、無意識に筆先に止める力を加えながら描いていたこともあって、やや硬質な線に仕上がったようだ。
■新しい9.7インチiPad

■iPad Pro

ディスプレイの持つ特性はフィルムで調整できる
ディスプレイの反射防止コーティングの有無については、新しいiPadもフィルムを貼ることで調整ができそうだ。周囲の環境光に合わせてディスプレイのホワイトバランスを自動調整するTrue ToneディスプレイもiPad Proの方にのみ搭載されている機能だ。長時間続けて絵を描いているときに目が疲れにくいメリットは感じられるものの、新しいiPadもフィルムをうまく活用することで快適に使える環境が整えられるだろう。
今回の取材のため平川氏に描いてもらったイラストをそれぞれの端末で表示しながら見比べてみると、新しいiPadの表示はより彩度・明度が高く、コントラスト感もメリハリが効いているように感じられる。一方のiPad Proはとてもナチュラルで「自然な色合いに仕上がる」と、こちらも平川氏は高く評価していた。なお通常はこの後、イラストの色合いを最終の納品形態に応じて、Webで公開する場合は様々な種類のモニターやOS環境で色合いをチェックしたり、紙媒体の場合は色校正を繰り返しながら微調整を重ねていくのが定石だ。
■新しい9.7インチiPad

■iPad Pro

平川氏も初めてApple Pencilを使ってiPadに絵を描いた時に、その感度の良さと滑らかな追随性能に驚いたという。液晶ペンタブレットなどのツールと違って、iPadは画面とペン先が触れ合う距離感で紙と変わらない描き味が得られることによって、クリエイティビティの幅が広がる。外出先に持ち歩きながら、ちょっとした空き時間にも創作にのめり込める。「一段と身近な価格で買える新しいiPadとApple Pencilの組み合わせでも同じことができるようになって、多くのクリエイターが創作の引き出しを増やせそう」と語る平川氏の手応えも上々だったようだ。

ポータビリティが抜群に高い新しい9.7インチiPadは多くのクリエイターが活躍できる場面を広げてくれるだろう。筆者としては今後、画面が大きくてApple Pencilも使える手頃な価格のiPadも欲しくなってきた。Apple Pencil対応はどこまで広がるのだろうか?これからのiPadのラインナップ展開も楽しみだ。
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