開演前から満員の会場であるにも関わらず、どころなく厳かな空気が漂う場内。奥はそんな雰囲気を変えることなくステージに登場すると、2014年にリリースされたアルバム「君と僕の道」から「幻の日々」を披露。まさにこれから始まるライブを暗示するかのような選曲から公演がスタートした。
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会場の照明は、開演後も彼女の歌とピアノの音を集中させるがごとく最小限の光量に抑えられ、それぞれの曲に合わせてゆっくりと変化。ライブ定番でもある「最後の恋」「あなたに好きと言われたい」といったヒット曲が後半に演奏されるものの、今回は「透明傘」や「悲しみだけで生きないで」など、普段のライブではあまり披露しない、タイトルだけでも涙を誘うような楽曲もふんだんに取り入れられていた。
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アンコールでは今年一番嬉しかったこととして、作詞家・阿久悠さんの生誕80年、没後10年のメモリアルとして企画され、レコード会社からリリースされたトリビュート・アルバムに参加できたことを上げた奥。「阿久悠さんと同郷(の学校)出身の父親への親孝行ができたことが嬉しい」と語り、阿久さんの未発表詞に、奥自身が曲を書いた「黄昏のアンニュイ」が披露された。
最後に奥は「(今回のライブの企画は)ずっといつかやってみたかった事をやってみました。もし、皆さんに好評なようでしたら、またぜひやってみたいと思います」と話し、今回のライブを締めくくった。