■e-kakashiの概要
e-kakashiは、田畑から得た情報を元にAIが営農をサポートするソリューション。2015年から情報をクラウド管理できるサービス(第1世代と呼称)を開始していたが、来春からはデータに基いてAIが農業機器を動かす第2世代サービスを商用化する。ブースの担当者に話を聞いた。

――田畑からは、どのような手段で、何の情報を得られるのか。それをどう活用するのか。
「例えば、田んぼでは水稲にセンサーを挿すことで水温のデータを取得します。これにより、取水からの積算温度が計測可能です。これを利用すれば稲の生育情報や収穫時期などを農家にお知らせできます。また田植え後、地温が12度以下ならコシヒカリの生育が遅れるとの文献がありました。これを考慮して、地温の低い田んぼには”管理してください”とアラートを出せます。あとは川から水を取り入れるとき、川上にある田んぼの水温は低くなり、川下にいくほど高くなります。こうした生育環境の変化は、収量にも影響を及ぼします。おかしいな、と思ったときに原因を調べるためにも、データを活用いただけます」

「特定の農家には、1ヵ月先の天気予報のデータも加えて、これを元に農作物がいつごろ収穫できるか判断する”生育シミュレーション”も提供してきました。このほか、穀物を育てる過程をデータで蓄積していくので、病気が発生した年はその原因も明らかにできます。今後は、糖度何%の果物をつくりたい、といった要望にも応えられるデータにブラッシュアップしていくことを考えています」
――どのような層に利用されているのか。
「現在のユーザー数は100未満で、センサーは300台稼働しています。九州、北海道にある大規模農家のほか、自治体、食品メーカーでの利用も増えています。契約栽培農家、あるいは自社農場に入れていただいております。労働者の数が減らせるほか、少ない栽培有資格者で田畑を経営できることが大きなメリットになっています。またデータを使えば、ベテランと若手で作業を比較することが可能です。これにより技術の伝承にも活用できます」

■AIが植物の状態を類推!
――第2世代サービスの特徴は。
「センサーで得られたデータ、気象情報やクラウド上のデータ、栽培について研究された過去の科学的な知見を元に、AIが植物の状態を類推します。いうまでもなく、植物は生育ステージで求められるものが変わります。これに対処できます。また、農家にはこれまでの経験で獲得した「暗黙知」の知識があります。これにデータに基づいた科学的な知見からアプローチすることで、技術継承が可能な知識にすることも考えています」
――どのように通信するのか。
「携帯電話網を通じて、様々なガジェットをつなげるイメージです。携帯電話網で直結すると聞くと、料金が高くなるのでは、と思われがちです。ところが今、全てのキャリアでは第5世代ネットワークの開発を進めています。第5世代では、通信速度の速い電波のほか、速度は遅いけれど安くて使いやすい電波も提供されます。このナローバンドを利用します。具体的には、世界標準規格LWM2M(ライトウェイトM2M)でつなぎます」

――農業は、どのように変わるのか。
「来春から商用を開始するサービスでは、例えばビニールハウス内の温度が高くなるとAIが判断して窓を開けます。本日のデモでは、実際にLWM2Mでつないで操作を行います。また灌水バルブが放水してハウス内の湿度を上昇させ、植物が光合成しやすい環境をつくることも可能です。栄養素と栄養素を混ぜ合わせる液肥の調合ユニットでは、土壌水分センサーがpHの値などを測定して、現在の植物に最適な調合で液肥を撒くことができます。従来の制御装置は、大規模な投資が必要でした。第2世代のサービスは少ない投資でスタートでき、操作もiPadなどの携帯端末から行えるため、利便性が非常に高くなっています」

※e-kakashiの戦略