【記事のポイント】▼高齢の独居者が増えることで、市場拡大が予測される食の宅配サービス▼在宅ケアの増加によって、介護食品や高齢者食品の一般需要が生まれる■狙い目は独居者向けの給食サービス 総務省の統計データによると、2016年9月15日時点における65歳以上の高齢者人口は3461万人。その数も、総人口における割合も増加の一途をたどっている。この先、高齢化社会が進む中で、どのようなビジネスチャンスが生まれてくるのか? そのヒントになりそうな高齢者食と介護食の専門展示会「メディケアフーズ展2017」が、1月25日から東京ビッグサイトで開催された。 同展示会では介護食品や高齢者食品にスポットライトを当て、専門セミナー「介護食品、高齢者食品は数少ない成長市場」を開講。矢野経済研究所フード・ライフサイエンスユニットユニット長の加藤肇氏が、高齢化社会におけるフードビジネスのヒントを語っている。その中でも、まず加藤氏が取り上げたのが介護食品と高齢者食品だ。 ここでいう介護食品とは咀嚼困難者食、嚥下食、流動食のこと。一方で高齢者食品とは、柔らかい物、カロリーを制限した物、少し量を抑えた物といったメニューのことを指す。ここで注目すべき点は、独居者が確実に増えていることだと加藤氏は指摘する。「統計でも世帯数が増加していながら、1世帯あたりの人員は減っています。それだけ独居者、とくに高齢者層の独居者が増えているのです」 では、高齢の独居者が増えると何が起きるのか? 加藤氏によると今後は介護食品と高齢者食品の中でも、特に給食や弁当といった宅配サービスの市場が拡大するという。■在宅ケア増加に合わせて生まれるビジネスチャンス 独居者の増加とともに、加藤氏がもう一つ注目すべきと話すのが、国が打ち出している「地域包括ケアシステム」だ。これは2025年をめどに、高齢者や要介護者が住み慣れた地域で暮らせるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援を包括的にケアしていく体制を作ろうという施策のこと。重度で治療が不可欠な患者以外は、なるべく在宅で、地域も協力してケアしていく方針となり、つまりは“在宅ケア”の増加が見込まれている。「在宅ケアの増加によって、ご家族の負担も当然増えることとなります。そのため食事は弁当や給食というケースが増えてくるでしょう。つまり介護食品、高齢者食品は数少ない成長市場なのです」 実際、大手の食品加工メーカーも、この“介護・高齢者向け”という分野は成長産業と見ており、“やわらか食”や“ミキサー食”といった製品を市場に送り出し始めているという。とはいえ、参入企業はまだまだ少なく、地域の中小企業も含めて参入する余地は大いにあるようだ。「実は高齢者は健康志向のいきすぎか、低栄養の人が増えています。高齢者の食事を聞いてみると、量が減っているのに野菜が増えていて、もっと栄養をつける食事を提供したほうが良いケースも多いようです」 食事はバランスが重要だ。減塩など栄養を抑えた食事がいいか、あるいは栄養のある食事がいいのか、各種ケースに対応するには地元に根差した企業のほうが小回りが利く。このことからも、介護食品や高齢者食品の市場成長は、中小企業にとって大きなチャンスと言える。