地方創生まちづくりEXPO「まちてん」(28・29日、東京・渋谷)の初日に行われたカンファレンス「Youth編」では、多くの人によって、1つの家を支えるアイデアを考案し、消滅の危機にある全国の古民家を村に変える「シェア・ビレッジ」を立ち上げた武田昌大氏が登壇した。 そもそも武田氏が、シェア・ビレッジを考えたきっかけになったのは、秋田県から車で40分ほどの五城目町にある築133年の茅葺古民家だ。この古民家は写真集の表紙を飾ったり、JR東日本のポスターにも使われた家だが、茅葺の維持費やオーナーが住み続けられないなどの理由から、解体が検討されていたという。 そこで、かねてから古民家が好きで、将来はこの家に住みたいと思っていた同氏は「日本の原風景が失われてしまう。きっとこの古民家だけでなく、日本全国で知らないうちに多くの古民家がなくなっているかもしれない。このままではいけない」という危機感を募らせ、「多くの人に少しずつお金を出してもらい、古民家をシェアしよう」というアイデアを思いったそうだ。そこでクラウドファンディングサイトの「Makuake」でも募集を開始し、合計571万円を集めたという。 このプロジェクトでは「年貢」(NENGU)と呼ばれる年会費3,000円を支払うと誰でも村民になれる。村民は、自分の好きなときに、いつでも自分の村(古民家)に行き、農作業をしたりしながら、シェアした村民同士で交流することができる。 「とはいえ、村民は都会暮らしで、田舎にあこがれている人たち。そう簡単に何度も秋田に来ることは難しい。そこで新しい仕組みも考えた」(武田氏)という。都市部にいる村民を対象にイベントを開催することで、村民同士のつながりを強める定期開催の飲み会「寄合」(YORIAI)をはじめたそうだ。 さらに村民同士が仲良くなると、住民同士で自分たちの村に遊びに行ける「里帰」(SATOGAERI)というツアーや、農作業など村の手伝いをする「開墾」(KAIKON)、年に一度のお祭りである「一揆」(IKKI)といったというイベント活動を通じて、村を大いに盛り上げていくという。 今年5月からプロジェクトを立ち上げ、1件の家に現在1,125人の村民がシェアしているそうだ。実際に人口1,122人の村が長野県と北海道にあり、その村を抜いて全国で人口が少ない村31位にランクインしたという。村民の人口分布で多いのは関東と東北だが、遠い九州からも村民の登録があるという。 そして武田氏は「古民家から“co-minka”にしたい。村があるから村民がいるのではなく、村民がいるから村ができる。今後は秋田県以外の全国にある古民家をどんどんシェア・ビレッジに変えていきたい。村民が集まると、村ができるこのプロジェクトで、新しい田舎づくりをしよう。もう、あなたも年貢の納めどき!」とユーモアを交えて、村民への勧誘も行っていた。