スマートフォンも同様で、さかのぼれば2005年には全面液晶タイプのNTTドコモM1000(世界ではモトローラA1000)が発売されていたし、その後もWindows Mobile OSを搭載した数々のスマートフォンが市販された。フルキーボード付きのスライドタイプやストレートタイプなど形状のバリエーションも豊かだった。しかしながら、いずれも大きなヒットにはならなかった。理由は明白で、それらのスマートフォンはPCで利用することを無理やりモバイル端末に詰め込んだだけだったからだ。モバイル環境、すなわち移動しながら手のひらで利用するということを考えれば、PC上での操作で必要なことがすべてスマートフォンで必要とは限らず、モバイル環境で利用するからこそ機能を削ぎ落として利用目的を絞り込み、ユーザーインターフェイスもPCとは全く異なるものを考えるべきだったのである。こうした要件を満たせたのが「指1本」で操作ができてしまうiPhoneだ。2007年に筆者はいち早く米国でiPhoneを入手したが、まさにモバイル環境での利用を想定した究極のスマートフォンであると興奮した。わが国では2008年から導入され、当然のことながら大ヒットを予見していたが、それが現実のこととなった。
Google Glassはどうだろう。じつは筆者はこれまでに多数のヘッドマウントディスプレイ(HMD)に触れてきた。しかしながら、いずれもが装着していて周囲に異質感を感じさせるものばかりであった。とても日常生活で装着しっぱなしで生活しようとは思わないものばかりであった。しかし、Google Glassはそれほど周囲に異質感を感じさせないようである。試しにソウルや東京、さらには青森でGoogle Glassをかけて街中を歩いてみたが、従来のHMDにおいてはすれ違う多くの人の目線を感じたものだが、Google Glassに関してはすれ違う人たちのほとんどが気がつかずに通り過ぎていった。そういう意味でGoogle Glassは、ようやく一般のユーザーにも受け入れられるHMDとなったといえそう。前述のようにGlasswareや交換可能なフレームによる拡張性などを考えても、iPhoneが登場したときぐらいの新たなブームが巻き起こることを予感している。