首都圏のホテルがペット宿泊可能なゾーンをなかなか設けようとしないのは、改築費がかさむことが原因だろうか?これに対して辻村氏は「(改築)費用よりも、ペットを入れることによる様々なトラブルが考えられる。それによって既存の客を逃してしまう懸念のほうが大きいのではないか」と説明する。ペットの吠える声がうるさいのではないか?毛が抜けて不潔になりはしないだろうか?といった不安のほか、ペット自体が苦手という人もいるだろう。よほどの対策を考えておかないと、リスクをかかえることになりかねない。グランドプリンスホテル新高輪がペット可の部屋やサービスを導入できたのは、軽井沢で培ったノウハウが生かされていることが大きい。 グランドプリンスホテル新高輪の「プリンス ドッグフレンドリースポット」は宿泊施設として「ドッグフレンドリールーム」を4部屋、ペット預かり施設「ドッグクローク」、ドッグラン&ラウンジ、カフェ・エーデルワイスを用意する。ペットは10kg以下の小型犬まで可能だ。 ペットとホテルにやってきた宿泊客は一般の客と同様フロントでチェックインし、館内がゲージまたはバッグにペットを入れて移動する。基本的には自分自身でゲージかバックを持参するように呼びかけているが、忘れた人には部屋に1つゲージが用意されているので、それを使うこともできる。“Dog Friendly Room”と書かれた客室は他の客室と同じフロアにあるが、一番端に位置している。ペットは物音に敏感であるため、人が廊下を歩くたびに吠えないようにとの配慮からである。部屋のなかにはサークル、ウェットティッシュ、おしっこシート、ごみ箱、餌入れなどは一通り常備されている。部屋のフックには、どんなリードでも対応でき、簡単に掛けられるものを装備している。床は毛がつかないようにとの考えからフローリングだ。料金はドッグフレンドリールームは1室2名と1頭あたりで12,150円から(3月31日まで)、通常の客室に宿泊しドッグクロークなどを利用できるプランは1室2名利用で7,350円から(3月31日まで)となっている。「ドッグフレンドリールーム」に宿泊の場合は、ペットのケア(爪切り、肛門腺、足裏ケア、ブラッシング)を無料でやってもらうことができる。カット、シャンプーはオプションだ。ドッグクロークは、いわゆるペットホテルだが全12室のセルフスタイルとなっている。チェックイン前に予定がある飼い主が、犬をここに預けるケースが多いという。また、移動でストレスがたまっているペットを遊ばせるというのにも「ドッグラン」は役立っている。 利用者が多いのは5月、8月、12月の休日前だが、特に夏の利用者に評判がいい。「都会では犬を連れて歩くには、(ペットの)遊び場が少ない。犬は暑さに弱く、エアコンがきいたドッグランなどは有難いという客が多い」という。 西武グループでは“ペットスマイルプロジェクト”として、ペットと過ごす時間や場所広げる事業の展開を推進している。グランドプリンスホテル新高輪の「プリンス ドッグフレンドリースポット」もその一環だが、ユニークなものでは西武バスのペット同伴ツアーなども挙げられる。 ペットの宿泊施設は当り外れが多いという声をよく聞く。それだけに気に入ったところが見つかれば、飼い主は必ずリピーターになってくれる可能性は高い。同ホテルの「ドッグフレンドリールーム」の稼働率は80%を超えることも多いという。今後は、いかに平日利用を増やしていくかが課題の一つだ。