■空間全体ををフィットネス化するという試み。新しい社会インフラを創出する可能性も 実は、この一坪型ヘルスケアスポットは内田洋行のヘルスケア戦略ソリューションの1つという位置づけであり、これだけにフォーカスしているというわけではないという。 村氏は「我々は、健康増進のサービスやスポットだけでなく、社員が健康増進を行なえる“場”や“空間”を総合的にプロデュースしていきたいと考えているのです。オフィス全体でヘルスケアを意識してもらい、コミュニケーションを活性化しようという考え方が根底にあります」と説明する。 いま企業では健康面の配慮から、喫煙ルームを廃止する方向にある。それは良いことだとは思うが、一方で「タバコミュニケーション」も失われつつある。かつては、異なる部署の人間がタバコ部屋で交流し、何か情報を得るという光景があった。喫煙ルームを壊したあと、コミュニケーションが行なえる手段を欲している企業も多い。そのとき真逆の発想だが、こういったヘルスケアスポットを置けば、社員が会話できる場所がつくれるかもしれない。オフィス内のコミュニケーションの場としての提案もできるだろう。 「具体的な空間の提案例として、社内に小上がりのある座敷スペースをつくることもアイデアに挙がっています。体組成計で測定するには靴下を脱ぐ必要があるので、裸足でくつろげる場所をつくるという発想です。そのスペースにサイネージを置いたり、オフィスグリコの置き菓子のように、ドリンク剤やサプリメントといった商品を箱から購入してもらうなど、個別オーダー型のヘルスケア空間を創出していきたいと考えています」(村氏)。 すでに、このようなヘルスケアスポットを導入している企業事例もある。コンビニエンスストアーを全国展開している大手のローソンだ。同社はヘルスケアを全社をあげて意識している企業で、大崎本社の休憩スペースを改造し、新たなヘルスケア空間をつくったという。 「こちらはチューリップ形ではなく、ボックス形をしているスポットです。チューリップ形は少し場所を取るので、省スペースモデルのタイプをデザインして納めました。いつでも社員が来たくなる場をつくるために、空間デザインから取り組みました」(五十嶋氏)。 筆者の個人的な意見だが、こういったヘルスケアスポットがコンビニの店舗にあると大変便利だと思う。ポイントカードと連動し、店舗で購入した弁当や菓子のカロリーを算出した上で、さらに店舗内のスポットで体脂肪計などを測って健康管理も行える。そんなユニークな“街の健康ステーション”が社会インフラとしてどんどん出現すれば、客足も自然に店舗に向くのではないだろうか? 「健康増進というと具体的に何から取り組んでよいのか分からないという方も多いと思います。そういう意味では、企業だけでなく、今後はこういったスーパーや、学校、自治体などにも、ご導入いただけることを期待しています」(村氏)。 高齢化社会が進む中で、内田洋行が推進するヘルスケアスポットなどのユニークな一連の取り組み。これらは企業だけにとどまるものではなく、新しい社会インフラを拓く可能性まで秘めているといえるかもしれない。