劇場版『イナズマイレブンGO vs ダンボール戦機W』レベルファイブ 日野晃博社長インタビュー後編 レベルファイブ ヒットの秘密■ レベルファイブ ヒットの秘密―― アニメ!アニメ!(以下AA)少し映画から離れますが、『イナズマ』と『ダンボール』、立て続けにヒットが出るのが驚きなのですが、なぜこんなに多くの人に受け入れられるのでしょうか?―― 日野晃博氏(以下日野)もともとレベルファイブは『レイトン教授』から始まって、『二ノ国』などもあり、最近ですと次に『妖怪ウォッチ』という作品を予定しています。僕らのテーマは、新しい作品を毎年ひとつずつ生み出して、いまのエンタテインメントに関わっていきたいということです。例えば、僕はサッカーが大好きだったので、前々からサッカーものを作りたいと思っていました。そのうえで昔あったサッカーものの熱い作品から自分が感じ取ったものをいまの子供たちに伝えるにはどうアレンジをかけたらいいのか、ということを考えて生まれたのが「イナズマイレブン」です。このように、クリエイティブの基本は、子供のころに見た時の感情を思い出して、その感情を今の子供たちに伝えるためにはどんな設定で、どんな作品にすれば、あのときと同じ感動を与えられるだろうと考えることなんです。―― AA時代性をかなり意識しているわけですね。―― 日野 そうですね。昔の子供たちと今の子供たちとでは戦闘シーンの激しさとかの経験が違います。今の子供たちには、昔よりさらにすごいものを見せてあげないと。時代が変わったことで見ているものが変わっていて、同じ感情を感じてもらうには今風のアレンジがいるわけです。過去に野球やサッカー、バスケとか、いろいろなスポ根ものがありました。その中に、例えば、主人公がレギュラーから落ちて上がらなきゃとか、特訓に特訓を重ねて絶対に勝てなかったやつに勝つとか、いろいろな王道のシチュエーションがありますよね。それを伝えるためにどんな表現方法で伝えればいいかです。―― AA『ダンボール』はどうですか?―― 日野『ダンボール』も同じです。僕はプラモデルが好きで、ガンプラも好きだったんです。それとミクロマン(注)が好きでした。作品の中に出てくる小さなヒーローを、実際におもちゃとして手にすることで子供たちはこれが動く姿を頭の中で空想できます。もちろん子供でもおもちゃだから動かないというのは分かっていますが、空想の手助けになるんですよね。『ダンボール』でもホビー用小型ロボット「LBX」のプラモデルが発売されています。このプラモデルを手に入れて、物語の中で自由自在に背景を動き回ることを想像することで、より感情移入度が増して、作品を愛してもらえるんです。―― AAレベルファイブは、子供向けを得意としていますが、子供のためのエンタテインメントを生み出す秘訣はあるのですか?(注)ミクロマン…1970年代に玩具会社タカラ(現タカラトミー)が展開した手のひらサイズの変形玩具。小型の変身サイボーグと様々なパーツから構成される。■ 「イナズマ」「ダンボール」のキャラクターづくり―― 日野 子供のためだけのエンタテインメントをやろうとしているわけではありませんが、『イナズマ』と『ダンボール』を展開するうえではターゲットを子供たちに絞っています。もちろんそれ以外のファンの人たちもいますが、子供たちに対してどういうものを見せたいか、どういうことで驚かせてやりたいかの目線を常に意識して作っています。この2作品については、まさに子供たちに昔の作品、昭和のころのアニメやマンガの熱いところを見せてあげたいですね。―― AA作品では主人公だけでなく、魅力的なキャラクターたちがたくさん出てきます。キャラクターを作るときに、子供の心をとらえるキャラクターづくりで気をつけていることはあるのでしょうか。―― 日野 『イナズマ』は特にそうですが、僕がキャラクター設定をするときには、子供たちに分かるようなデフォルメをします。例えば、「すごく怖いやつだけど、実は根はいいやつ」というキャラクター設定の時に、そのキャラのバックストーリーと彼の感情を子供たちに理解できるように作るのが大事だと思っています。エピソードを語るときに子供たちに分かるように語らないといけないのですね。複雑な人間関係によって悩むよりも、シンプルなことでちゃんとキャラクターたちの悩みを作ります。それによって子供たちが感情移入し、キャラクターを好きになることを心掛けています。―― AAキャラクターの造形もバリエーションがたくさんあって楽しいですね。―― 日野 『イナズマ』のキャラクターデザイン画は、長野というキャラクターデザイナーが担当しています。いつも彼と話してキャラクターづくりをするんです。彼のキャラクターづくりはシルエットをすごく大事にしています。かたちで覚えられやすいように特徴を作って、かたちの面白さに気をつけていると聞いています。それが子供たちにもすごくアピールできていると思います。■ 毎年、新しいコンテンツを打ち出したい―― AA最後に今後の展開について伺っていいですか?―― 日野 今後の展望では、毎年、新しいコンテンツを打ち出して、それを『イナズマ』などのような、みんなから知られている人気コンテンツにしたいという目標はあります。着実にひとつずつ大事に作品の世界観をつくっていって、毎年、今年の新作はこれだと送り出していきたいと思っています。―― AA例えば『イナズマ』で『GO』になったときに、物語がドラスチックに変わりました。『ダンボール』や『イナズマ』で、今後、また大きくステージが変わるみたいなことは考えられていますか?―― 日野 もし、シリーズが続くのであれば、またダイナミックに変えたいですね。―― AAそれは是非、期待させてください。本日はお忙しい中、ありがとうございます。前編奇跡のコラボ「イナダン」企画が実現した理由に戻る劇場版『イナズマイレブンGO vs ダンボール戦機W』2012年12月1日(土)全国東宝系ロードショーhttp://www.inazuma-movie.jp/