孫正義氏率いるソフトバンクグループが目指すのは、間違いなく業界の頂点であろう。ということで、筆者は「NTTドコモ vs ソフトバンク」の勝負がどのように進展して行くのかが今後の見所になるのだろうと漠然と考えていた。しかし「攻めのソフトバンク」は、すでに視野を世界に向けていたのだ。現段階では、米携帯通信事業者の買収に向けた交渉の事実が報じられただけであり、ご破算になる可能性もある。しかし、ここ最近は鴻海グループら中国系、あるいは韓国系企業から「買収先のターゲット」に成り下がった感のある日本企業の中にあって、米企業の買収、しかも過去最大規模の買収になりえるこの話題に、胸のすく思いを感じた方も多いはずだ。ソフトバンクは「国内でのシェア争い」といった小さなことよりも、もっと大きな「山の頂」を目指して、アクションを起こしていたということだ。
孫正義氏は、日本の高校を中退して渡米し、1980年にカリフォルニア大学バークレー校経済学部を卒業している。じつは筆者は偶然にも、このソフトバンクによるのスプリント・ネクステルの株式取得の報道を、まさに孫正義氏が学んだカリフォルニア大学バークレー校に出張していた最中に知った。新学期が始まったばかりの米国の大学は新入生歓迎の活気に満ちていた。滞在先のアメリカでは、New York Times のウェブ版など一部の媒体でソフトバンクとスプリントの交渉の話題が報道されているが、カリフォルニア大学バークレー校ではこうした話題を知っている学生は残念ながらほとんどいなかった。