『放課後ミッドナイターズ』 竹清仁監督×山寺宏一さん(キュンストレーキ役)インタビュー 前編アニメ映画『放課後ミッドナイターズ』は、モーションキャプチャーをフルに使かったCGアニメだ。人体模型のキュンストレーキを主人公とするほか、個性的なキャラクターたちが登場。そこから繰り出す絶妙なギャクが話題を呼んでいる。国内だけでなく、アジア同時展開、世界の映画界を狙うという壮大なプロジェクトも進行中。2012年の話題のアニメ映画のひとつと言っていいだろう。映画の監督を務めたのが、竹清仁監督だ。構想7年、製作に5年を費やし、本作を創り出した。そんな監督と主人公・キュンストレーキの声を、歌まで交えて見事に演じた山寺宏一さんに話を伺った。『放課後ミッドナイターズ』http://afterschool-midnighters.com/―― アニメ!アニメ! (以下AA)まず山寺さんに伺わせてください。『放課後ミッドナイターズ』に出演するお話は、どういった経緯だったのですか?―― 山寺宏一さん (以下山寺:敬称略) 推薦してくださったそうです。―― 竹清仁監督 (以下竹清:敬称略)推薦というか、お願いです。―― 山寺 「こういう作品があるんだけど」と言われキャラクターの絵を見せていただいたら、「こりゃ気持ち悪いからダメだろう」と。(笑)「肉むき出しだし。でも一応見てみようか」と見たら最高に面白くて。すでに出来上がった動画を見せていただいたらもう一目惚れです。一目惚れと言わないですか。もうすでに「ダメだ」と一瞬、思っていますからね。(笑)そのセンスが、日本の作品と思えない。ぜひやらせてくださいとこちらからお願いしました。―― AA逆に監督が山寺さんにお話を持っていったのは、どういう経緯ですか?―― 竹清 日本のアニメっぽくなく、海外のコメディ作品っぽくしたかったんです。それで海外の吹き替え映画のDVDをたくさん観ました。いろんな人を挙げたら、全部、山寺さん声だったんです。「山寺さんしかいないので、ダメもとで」とお願いしました。―― 山寺 監督が好きそうな作品の吹き替えをやっといてよかった!―― AA声をかけられた時に、何を期待されていると思われましたか?―― 山寺 むしろ、「こういう風に演じたい」というものが出てきました。監督はこれをやりたいんだろうなと感じたんです。普通じゃないことはわかったので、果たして俺にちゃんとできるかという不安は当日までありました。やりたい気持ち「やらせてくれ!」「やれるぜ!」はあるのですけど、そりゃ監督に会ってみなきゃわからないし、現場で「違うんだよね」と言われたらね?いつも初めてやるときは怖いんですよ。「期待したけど山ちゃんそうじゃないんだよ。がっかりだよ」と言われたらどうしようかと。でもお会いしたら優しそうな人なので、とりあえず大丈夫かなと思ったんですけど。―― AAキュン樣を演じるときに「どこを気をつけよう」とういうのはありましたか?―― 山寺 いっぱいあります。基本的にはもう映像が芝居をしています。ブチギレかたとか、ビビリかたとかが脚本に細かく書かれているんです。それが最高に面白いんですよ。それで芝居をしているから、うまくできるかよりは楽しみながらやりました。こういう作業が大好きなんです。「えっ!?」とやった目の動きとか。僕は不思議に思うんです。たぶん実写で誰か面白い人が芝居したって、あんなに面白い表情とかできないような芝居をしていますよね。旧校舎に行かなきゃいけなくなるシーンで、「いやあ、俺は……」ってビビってないふりをするじゃないですか。すごいビビって最初からガクガクになって、あのときの微妙な押し付け合う芝居って最高に好きなんです。―― 竹清 あそこいいですよね。―― 山寺 あの表情とか動きはどうやるんですか?あれは、実写の人が面白くやろうとしったって意外と外したりしますよ、―― 竹清 あれはモーションキャプチャーの人の役作りです。稽古をして「キュン様はこんな感じ」というのが身に付くまでずっとやります。―― AAそれはするのは役者さんなんですか?―― 竹清 地元の役者さんです。それで役に入っていただいて、本番はむしろアドリブOK。段取りとかじゃなくてノリでやってもらいます。顔を作るアニメーターの芝居はなんとなくわかるので、ちょっとオーバーにアクションをつけます。それに山寺さんの声がさらにオンしてもらうので、すごく贅沢な作り方ですよね。―― 山寺 そうか。じゃあモーションキャプチャーのときの芝居がうまいんですね。その演出を監督がちゃんとしているから。そこまでやる日本のアニメであまりないですよね?―― 竹清 モーションキャプチャーは日本のアニメでもたくさん使っていますけど、だいたいコストを下げるために使っているんです。今回はコストを下げるためじゃなくて、お芝居をするために使っているんです。―― 山寺 それ、やっぱりすごい。―― AA確かにアクションシーンのモーションキャプチャーはよくありますが、ギャグで使うというのは聞かないですね。―― 竹清 たぶん初めてだと思います。モーションキャプチャーだと絶妙な間が出やすいんです。―― AA今回はかなりバラエティ色の豊かな映画ですが、声優さんのなかでバラエティと言えば山寺さんしかいないと思います。総合的に自分から笑いを作り出すことが素晴らしいです。―― 山寺 いやいや、面白い人はいっぱいいます。ただ僕はそういうのが大好きですね。―― AAそうした立場から、今回の笑いとかギャグはどのように思われますか?―― 竹清 それは僕もすごく聞きたいです。―― 山寺 全編に渡ってストライクですよね。だからやりたいと思ったんです。ビビりながら押し付け合うあの裏腹な気持ちを面白おかしくやるとか、振り返りひとつ、踊るときのそれひとつが全部面白いんです。あとはトータルで出てくる醸し出す雰囲気とかセンスというのがやはり日本でいままでになかったものを監督は持っていらっしゃるんでしょうね。そこはもうセンスとしか言いようがないですよね。あと僕が一番すごいなと思ったのは、最初のほうにあるミュージカルシーン。急に歌い出すわけですから、これをここに入れるのは大変なことです。―― AA歌うのも最初からオファーのなかに入っていたのですか?―― 山寺 ありましたね。―― 竹清 それもあって山寺さんに是非です。―― 山寺 吹き替えではやったことがあるんですけど、なかなか日本のオリジナルでいままでなかったですよね。―― AA歌と動きを合わせるのは難しくないですか?―― 山寺 僕が普通にレコーディングして歌えば、それに合うように監督が作っています。だから僕は本当にたいしたことはしてないですよ。乗っかっただけですから。―― 竹清 なにをおっしゃる(笑)。山寺さんにやっていただいたのは普通の歌じゃなくて、半分お芝居みたいです。だから本当によかった。―― AAあれは意図的にミュージカルっぽさも織り込んでいるわけですね?―― 山寺 もう完全にミュージカルですよね。―― 竹清 そうです。―― AA『放課後ミッドナイターズ』は、とても評判で、でも最初にお話だけ聞くとちょっとキワモノっぽいところもありますが・・・。―― 竹清 キワモノって書いていただいて大丈夫です(笑)。―― 山寺この絵ですから(笑)。入り口はそうです。でも中身は違います。―― AA映画を観ると「これSF映画じゃないか」と思ったのと「ファミリー映画じゃないか、これお子様OKだよね?」とも思いました。それは意識されていたのですか?―― 竹清 もちろんそうです。僕は中学生の頃に見ていた『ゴーストバスターズ』とか『バック・トゥ・ザ・フューチャー』とか『グレムリン』とかが大好きで、その雰囲気が出ていると思います。理屈なしで楽しめる感じを意識しました。『放課後ミッドナイターズ』http://afterschool-midnighters.com/