サンディエゴ・コミコンで、最も重要な企業を挙げるなら、マーベル・コミックスとDCコミックスの2社で間違いないだろう。両社はコミコンの主要コンテンツであるアメリカン・コミックスの2大出版社で、その市場シェアの7割から8割を占める。長年にわたり業界を牽引してきた存在だ。そうした存在感は、コミコンの展示会場のフロアプランにも表れている。両社は会場中央に一際巨大なブースを設け、多くのファンを集めている。ただし、その展示内容は、コミックスの出版社とのイメージからはだいぶ異なる。実はアメコミの存在がだいいぶ影が薄くなっているからだ。例えば、マーベルはここ数年、ブース中央にステージを設けている。ステージとその前の観客スペースでブースのほとんどを占めてしまう。ステージで演じられるのは、同社のコミックスから映画化された作品に関するものがほとんどだ。今年はステージ上に2013年公開の『アイアンマン3』大々的に押されている。何体ものアイアンマンがそこで展示されている。残りのスペースでもゲームやキャラクターグッズがあり、コミックの存在感はあまり高くない。コミックについては多数設けられているパネルと呼ばれるトークイベントに任せて、ブースでは大衆向けの映画路線を打ち出す。様々なコンテンツを並べるのはDCコミックスも同じだ。ただし、こちらのステージはより小さい。むしろ、ゲームやフィギュアなど、メディアミックスをバランスよく紹介することが配慮されて、バラエティ豊富だ。これは、映像作品はグループ会社のワーナー・ブラザーズの存在感がより大きいことも理由かもしれない。また、コミックアーティストによるサイン会も大きくとられている。マーベルよりも原作(コミックス)によりスポットライトを当てたいとの意識も見られる。映像中心のマーベルとバランス感のあるメディアミックスのDC、それぞれの特徴が表れたブースづくりになっていた。[数土直志]コミコン2012http://www.comic-con.org/