NECは20日、利用されていない周波数帯を有効活用するコグニティブ無線の受信回路を、一つのチップで実現する技術を開発したと発表した。 コグニティブ無線とは、周囲の無線環境を認識して空き周波数を見つけて利用することで、効率的な通信を実現する技術。災害現場で発生した無線通信の障害や、将来の周波数資源の不足を解決する技術として注目されている。 今回NECが開発したチップは、30MHzから2.4GHzの幅広い周波数帯において、任意の周波数の信号を受信するとともに、電波強度を計測して空き周波数を見つけることができる回路を搭載している。 この幅広い周波数帯は、警察、消防、防災向けの公共業務用無線や、パソコンやスマートフォンなどに搭載された無線LANなど、主要な無線アプリケーションに対応。また、無線の受信回路を一つのチップで実現することで、無線機器の小型化と省電力化に貢献しているという。 複数の周波数から利用できる空き周波数を見つけ出す際に、従来は調べたい周波数以外の信号を除去するフィルタ部品を複数用意していたため、面積が大きく高コストになっていた。今回の技術では、混信する複数の周波数の信号を除去できるフィルタ回路技術を開発。これにより、幅広い周波数帯から任意の信号を選択し受信できる回路を一つのチップで実現し、従来の複数のフィルタ部品を用いていた場合と比較して約3分の1の小面積化と低コスト化を実現したとのこと。 また、任意の周波数の電波強度を調べる検出器において、従来は弱い電波の強度を細かく計測するために、強い電波の強度も細かく計測していたため、計測結果を読み取るADコンバータの消費電力が大きくなっていた。これに関して、大小様々な強度の電波を検出する用途と、弱い電波のわずかな強度の違いを細かく検出する用途の両方に、プログラムの変更で対応できる電力検出技術を開発。消費電力の大きなADコンバータが不要となり、従来と比較して約2分の1の省電力化を実現した。 NECでは今後も、コグニティブ無線技術・製品開発に積極的に取り組んでいくとしている。