実はこうした医療現場に求められている電子化は、米国の医療情報管理システム協会「HIMSS(Healthcare Information and Management Systems Society)」が定める電子カルテ基準にはきちんと定義されている。ところが日本では、電子カルテ製品に限って言えば、すでにオーダリング機能を主体としてコモディティ化(日用品化)が進んでいるが、病院情報システムとなると、「構築手法は“大手ベンダー城下町”と化している」と澤氏は語る。
iEHRでは、4つのピースである「EHR」(Electronic Health Record;診療録)、「POE」(Provider Order Entry;オーダリング)、「CDR」(Clinical Data Repository;データベース)、「DSS」(Decision Support System;診療支援)がフラットに連携し、それらを大規模データベースが支えている。
この新しい医療の実現に向けて期待されているのが、非営利団体「Continua Health Alliances」の取組みである。たとえば「慢性疾患管理」は、前述の医師の診療サイクルにおいて、患者自身またはコンピュータが体調の“トレンドを検知”し、それをもとに患者が“生活スタイルを修正”、“健康増進”を図り、そのデータを一般にも“提供”していくという「予防的健康管理」が期待される。また、病院現場の「ラストワンマイルソリューション」の取り組みとしても、患者の測定頻度が高く看護師の負担も高い血圧計・体温計・体重計に通信機能を持たせて、システムに取り込めるような相互接続規格を同団体で策定している。帝京大学医学部附属病院では、その規格に準拠した血圧計で測定したデータをiEHRに自動的に取り込むという実証実験を、現在行っている。