独立行政法人 理化学研究所(理研)は17日、文部科学省が推進する「最先端・高性能汎用スーパーコンピュータの開発利用」プロジェクトの一環として開発を進めている次世代スーパーコンピュータの新システムを、“スカラ型単独”構成に決定したことを発表した。 理研は、次世代スーパーコンピュータの開発主体として2006年9月から概念設計を開始。2007年に概念設計が終了、評価を経て開発を推進していた。当初、システム構成は、スカラ部とベクトル部からなる複合システムだったが、ベクトル部の開発を担当していた日本電気が、2009年5月に製造段階への不参加を表明。複合システムの実現が困難な状況となっていた。新システムの開発は、理研と富士通が共同で実施し、性能目標10ペタFLOPS(フロップス)達成と2012年完成など、当初の計画どおりの達成を目指す。新システムはこれらの前提に検討され、スカラ型単独の構成とされたという。次世代スーパーコンピュータには、45nm半導体プロセスを用い、富士通が設計した現時点で世界最高速(SPARC64 VIIIfx、8コア、128ギガFLOPS)のCPUが採用される。 計算ノード間を接続するネットワークは、次世代スーパーコンピュータの構成に最適な直接結合網のネットワークが採用された。一般的に直接結合網は、システム規模の自由度・拡張性が非常に高い反面、システムの耐故障性や運用性に難点を持つことが知られているが、今回開発されたネットワークでは、多次元メッシュ/トーラスという結合方式が採用され、自由度・拡張性と耐故障性・運用性が両立されている。また、このネットワークは、隣接したノード間で広帯域の通信路を持ち、さらに、プログラミング時の論理的なネットワーク構成イメージとして、3次元までのトーラスネットワークを構成できる。これにより、ユーザは、科学技術計算によく現れる隣同士のデータを使うアプリケーションを、効率的に実行することが可能となる。エラーリカバリ機能を有するCPUやネットワークの性能を十分発揮するシステムソフトウェア群も併せて開発されており、基本ソフトウェア(OS)にはLinuxを採用。標準規格に準拠した言語(コンパイラ)や、標準的な通信ライブラリが装備される。 新システム構成ではスカラ型単独のスーパーコンピュータとなったため、ベクトル型スーパーコンピュータを利用しているアプリケーションを、次世代スーパーコンピュータにおいて効率的に実行可能なアプリケーションにするために、書き換えなどの調整が必要となる。現在、文部科学省において登録施設利用促進機関が行う利用者支援業務のあり方について検討が進められているが、理研では、こうした関係機関などとも協力し、ベクトル型のユーザに対して充実した支援を提供していきたいとのこと。スカラ型単一のシステムになったことによるユーザへの影響は、文部科学省の次世代スーパーコンピュータ中間評価作業部会において限定的であると評価されているという。