富士通研究所は21日、窒化ガリウム(GaN)高電子移動度トランジスタ(HEMT:High Electron Mobility Transistor)を用いて、C帯(4GHz〜8GHzの周波数帯)で300ワットを超える出力および効率60%の高出力・高効率増幅器を発表した。 今回開発された技術では、2つのトランジスタチップにより構成された増幅器において、配線長の違いによる位相差を解決するため、多分割の入出力線路を採用。これにより効率的な出力の合成が可能となった。 近年、ガリウム砒素トランジスタよりも高出力で放熱性に優れた窒化ガリウムHEMTを用いた増幅器の開発が進んでいたが、窒化ガリウムHEMTにより、従来のガリウム砒素(GaAs)を用いた増幅器に対して6倍強となる世界最高出力320Wを実現したという。これにより、電波の到達距離が従来に比べ2.4倍に伸びるとのこと。 またC帯は、雨や霧による減衰を受けにくい特長を持ち、衛星通信、固定無線、無線アクセス、航空管制レーダー、気象レーダーなどの用途で利用される周波数帯。今後は、高出力用途で用いられている進行波管増幅器の置き換えが進み、これらの送信システムの小型・軽量化や省電力化、長寿命化が可能となる見込みだ。 なお、今回の技術の詳細は、米国 カリフォルニア州 モントレーで10月12日から開催された化合物半導体回路の国際学会「2008 IEEE Compound Semiconductor IC Symposium」にて発表された。