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AirgoNetworks Japan 高木映児氏 |
この講演は、東京ビッグサイトで7月21日から23日まで開催されたワイヤレスとモバイルの展示会「WIRELESS JAPAN」のカンファレンスでおこなわれたもの。
802.11nは、MIMO(Multi-Input Multi-Output)技術を採用。送受信に複数のアンテナを使用することで、同じチャネルに異なる通信内容を空間的に多重させることを可能とし、合計の通信速度を向上させる技術で、すでにAirgoのチップセットを採用した108Mbpsの製品もリリースされている。
MIMOを採用することで、チャネルの利用効率を上げられるほか、複数のアンテナで受信することによるダイバーシティ効果で有線イーサネットなみの安定性が得られる。原理的には、応答を正則行列で表現、逆行列で送信側の出力信号に戻すというもの。しかも空間多重されたデータを戻すための逆行列はパケットごとに再調整されるため、通信中に端末を動かしたり向きを変えたりしても動作に支障はない。
高木氏らのおこなったテストでは、送信用に2つ、受信用に3つのアンテナを搭載したMIMO対応端末と、市販のIEEE802.11g端末を比較。電波環境の良い条件で802.11g端末で20Mbps〜15Mbps程度であったのに対し、MIMO端末は44Mbps程度を実現。さらに、壁やパーティションをはさんで11g端末が1〜2Mbps程度しか出ないという悪条件でも、MIMO端末は23〜24Mbps程度の通信速度を確保したという。
送信アンテナが複数の構成の場合、従来の11g(送信アンテナ1つ)とくらべて消費電力でやや不利な面があるが、行列による空間多重からの復元処理が間に合う範囲であれば、アンテナ数を増やせば増やすほど通信速度をアップさせることができるという。
高木氏はMIMO方式の今後の見通しについて、PCだけでなく家電、特にHDTVのように高スループットと安定性が求められる用途などにも普及していくとの見通しを示した。
![]() | 市販802.11gカードとMIMO端末のスループット比較のグラフ(クリックで拡大) |
![]() | MIMO方式の原理。アンテナ同士の距離は無相関であることが条件(クリックで拡大) |
![]() | MIMO対応のデュアルバンド無線LANカードの構造。54mmというカード幅に複数のアンテナが並んでいる(クリックで拡大) |