IIJによれば、ふつうにHTTP/HTTPSで通信する場合、ウェブサイトの使い勝手はサーバの場所からの距離によって大きく異なり、東京からは0.89秒で表示できるサイトも、ニューヨークでは7.6秒、ロンドンでは10.97秒(東京からの10倍以上)かかる。これが、IIJネットライトニングを使用すると、ニューヨークで0.86秒、ロンドンでも1.14秒で表示できるということで、ほとんど国内からのアクセスと変わらない速度に改善されるという。(サンプルはhttp://www.kantei.go.jp/、数字はいずれもIIJによる実測値)
Netli社のウェブ高速化システムは、キャッシュサービスと異なり、動的コンテンツにも対応できるのが特徴。遅延の大きなネットワークでウェブ(HTTP/HTTPS)を利用する際に、速度低下の原因となるのはTCPのスロースタートや、セッション確立にともなうオーバーヘッドだという。Netliのこの仕組みでは、エンドユーザ環境に近いネットワークに「バーチャルデータセンター(VDC)」を、サーバに近いネットワークに「アプリケーションアクセスポイント(AAP)」を設置、VDCとAAPのあいだを独自の高速転送専用プロトコルでつなぐことで、複数のHTTPリクエストを集約、通信回数を減らしている(それによって遅延の影響を抑えることができる)。また、この独自プロトコルはTCPではないため、スロースタートの影響も回避できるという。
また、このIIJネットライトニングは、ウェブサイト側もエンドユーザ側もまったく環境を変えずに利用できるのも特徴となっている。DNSの設定を変えてウェブサイトのアドレスをNetliのVDCにリダイレクトするだけでいいということで、Netliの技術者によれば「15分でサービス開始が可能」だという。
従来のCDN(コンテンツデリバリネットワーク)との関係としては、CDNが静的コンテンツを国内向けに提供するもの、IIJネットライトニングが動的コンテンツを海外向けに提供するもの、ということで、同じウェブ高速化とはいっても、まったく適用範囲は異なっている。ちなみに、海外向けに“静的”コンテンツを高速提供したい場合は、既存のキャッシュサービスで十分だということだ。
IIJでは、この「IIJネットライトニング」を、BtoB購買サイトなど海外に対してもウェブアプリケーションを提供する必要のある顧客向けに販売していく計画で、初年度の売り上げは50件1億円を見込んでいる。
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IIJ発表資料より、通常のTCPベースのHTTPリクエスト(上)と、Netliプロトコルによる高速化の様子(下) |