いまだに続く平成不況に対して、家電メーカは打破するための手段として家電製品にネットワーク対応という付加価値をつけ始めた。これまでもいくつかのアプローチがあったが、どれもスケールするにはいたらなかった。しかし、今度はどうやら本気だ。CEATECでみられるものは、インターネット冷蔵庫やインターネット電子レンジといったものではなく、もっと身近で確実性のあるテレビ番組のハードディスクレコーディングをコアにしたAV商品群だ。すでにその分野はCDやDVDといった形ですでにデジタル化を終えており、これまでもIP対応にリーチをかける状態にいた。
今、家電メーカはIP対応家電のアプローチとして次の2つをねらい始めている。ひとつは家電製品がデジタル化とネットワーク化することで、今までにないユーザビリティを受けられるというものだ。今年の年末商戦に託されたIP家電はまさにこのアプローチを狙っている。もうひとつのアプローチはまだこれからであるが、家庭内の機器がネットワークでつながり、互いにコミュニケーションしあう、もしくは人間をサポートするというものだ。
いずれにしても常時接続でしかも広帯域というブロードバンドインターネットアクセス環境が前提で、無線LANの登場により家電製品の置き場所を限定されることがなくなったという技術面での変革がようやくIP家電を実現的なものにまで仕立て上げてきた。ただし、技術面の確信だけではない。長引く不況により、家庭内で楽しめるローコストで高品質のエンタテイメントが求められはじめている。まさにIPというネットワークを身につけたIP対応家電は、その欲求に答えられるものの候補となりつつあるわけだ。
具体的に、CEATECで出会えるIP家電の製品群は次のようなものだ。もっとも進んでいるAVのデジタル化によりIP対応の姿を見せ始めたAV機器を大別すると2つに分けられ、ビデオ再録機器の置き換えを狙ったSTB形式のものが販売開始にこぎつけた。ソニー、松下をはじめとして各社がもっとも力をいれているこの分野は、テレビ番組のハードディスクレコーディングを中心にネットワーク経由でのEPG機能を装備し、携帯電話からの録画予約を実現する。Ethernetポートも装備し、ストリーミング再生機能を持ったり、EPGを通しておすすめ番組自動録画機能を提供したりする。価格帯としては10万円前後の高級機になるが、これまで以上のユーザビリティを提供するIP対応家電は徐々に浸透しいくであろう。製品としては、ソニーのCoCoon(写真)や松下のブロードナウが代表的なものだ。
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もうひとつのアプローチは、家電というよりも家電とPCの融合を狙ったものだ。ハードディスクレコーディング機能を持つ家庭内サーバにすべてをデジタルレコーディングし、各所からはそのサーバを参照して再生する。まだ参考出品段階であるが、ビクターがAVネットワークとしてサーバに集中録音・録画し、各部屋の端末で再生するというデモを実施していた。宅内であればワイヤレスや有線のネットワークがサーバと端末を結び、屋外であればメモリカードにデータを転送して持ち出す。ビクターはそんな世界を描いた。現状では参考出品ではあるが、いま出始めたSTB型のハードディスクレコーダはいずれサーバへ進化し、ビクターが描く世界に近づくことは比較的明確だ。
今年のCEATEC JAPANでは、こうした新たな家電製品のアプローチを描くブロックもある。会期は5日まで。幕張メッセで開催中だ。