【コラム】“NewJeansおじさん”とは結局何なのか?K-POPマイノリティ世代の今 | RBB TODAY
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【コラム】“NewJeansおじさん”とは結局何なのか?K-POPマイノリティ世代の今

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NewJeans(Photo by Rich Polk/Billboard via Getty Images)
  • NewJeans(Photo by Rich Polk/Billboard via Getty Images)
  • NewJeans(Photo by Steve Granitz/FilmMagic)
 音楽に年齢は関係ない。どの世代がどんなジャンルの音楽を聞こうが、個人の自由だ。では、なぜNewJeansを推す中高年層を表す、“NewJeansおじさん”というワードが生まれたのか。そもそも、“NewJeansおじさん”とは何なのか。その存在が生まれた理由を探っていくと、NewJeansならではの魅力が改めてみえてきた。

■筆者プロフィール山田有真
名古屋を拠点とするフリーランスの編集者・ライター。グルメ・レジャー・音楽・映画など幅広いジャンルを取材・執筆。第3世代以降のK-POPが好きで、SNSで推しケミの動画を漁るのが日課。旅とビールと猫が好き。X(Twitter):@yuma03303


SNS拡散から約1年、「NewJeansおじさん」の今


 近年の“NewJeansおじさん”に関する様々なネットニュースやSNSを見ると、“NewJeansおじさん”とは、「K-POPが特別好きではないのに、NewJeansだけを別格視して、彼女たちを慕う中年男性のファン層」を指すことが多いようだ。

 そして、若者を中心にSNSでは、「K-POPファンがどんな思いで、アイドルを応援しているか知らないくせに語らないでほしい」「NewJeansおじさんは苦手」など、その存在に冷めた視線が向けられつつある。

 一方、“NewJeansおじさん”だと開き直った中高年層のファンは、SNSで「NewJeansおじさんだから、ILLITの曲が結構好き」、NewJeansとSHIBUYA109のコラボキャンペーンについて「NewJeansおじさんは109に入れない?」など、彼女たちへの思いをオープンにした投稿が多く見られている。

 音楽に年齢は関係ないが、K-POPファンは圧倒的に若い世代が多い。若者の立場からすると、“NewJeansしか知らない”おじさん達が、急にK-POP領域に介入してきたように思えるのだろう。

 そして、そんなおじさん達がNewJeansの魅力を自身の知見を交えて発信する様子が、“知ったかぶっている”、“ドヤっている”ように映り、「NewJeansしか知らないくせに・・・」と苦手意識へと繋がっているのだろう。

 中高年層のファン達の投稿を見ているかぎり、若者たちにマウントをとろうとしている気持ちは感じられない。むしろ、いきいきと推し活を楽しんでいるように思える。“NewJeansおじさん”とは、若者とおじさんの溝を象徴するワードなのかもしれない。

中高年層を魅了する、レトロなR&B調サウンド


 中高年層からNewJeansが注目を集める理由は、彼女たちならではの音楽性にある。NewJeansの主な楽曲の主軸は、80年~90年代の要素が落とし込まれたR&B調のサウンド。



 若者たちにはトレンディ感が漂うサウンドに“エモさ”を感じ、中高年層は“親しみ”を感じるのだ。また、ヒット曲「Ditto」や「OMG」をはじめ、彼女たちのMVやパフォーマンスビデオの映像は、まるで90年代のビデオカメラで撮影したような画質の粗さも印象的。どこか懐かしさを感じる音楽、楽曲の世界観を表現したMVに漂うレトロな雰囲気が、その時代に“若者”だった中高年層の心に刺さるのだ。

 新時代の音楽シーンを担うフレッシュなNewJeansと80年代のレトロサウンド。NewJeansならではの、令和と昭和のカルチャーをミックスしたコンセプトは、ある意味、シンプルに“NewJeansおじさん”という造語にも表れているのかもしれない。

“トレンド化”するNewJeansの音楽と日本進出


 世界の音楽シーンを席巻するNewJeans。圧倒的なパフォーマンスはもちろん、その魅力を発信するビジュアルやMVなどクリエイティブ面も話題だ。

 “世界三大広告祭”のひとつに挙げられる「Clio Music Awards」にて、「Ditto」のMVが大賞受賞候補に挙げられるなど、NewJeansの存在は広告に携わるクリエイターやビジネスマンからも関心が高まっている。

 日本では、大手ヘアケアブランドの広告モデルに就任、朝の情報番組の新テーマソングに新曲が決定、広告キャラクターを務める大手菓子メーカーの新キービジュアルを発表など、国内活動が活発化している。



 さらに6月の日本デビューに向けて、6月に東京ドームでファンミーティングを開催することを発表、国内の有名ファッション誌の表紙をNewJeansのメンバーが飾るなど、国内トレンドの中心には、必ずNewJeansの姿がある。

 彼女たちの日本進出をキッカケに、ビジネスの一環として、NewJeansを知る中高年層も増えるだろう。ビジネス界の“NewJeansおじさん”も出現する可能性もゼロではないのだ。



 グローバル人気が加速するK-POPガールズグループのなかでも“頭一つ抜けた”存在として、今や世界中の音楽シーンを牽引するNewJeans。レトロなR&B調サウンドを主軸とした音楽、その世界観を表現するアーティストとしての力量、彼女たちのすべてが唯一無二の魅力を放っている。

 そんな彼女たちの魅力に純粋に惹かれ、K-POPに関心はなかったけれど、NewJeansの音楽なら聴いてみたいと思った。新たな発見に出会えた嬉しさを、自身の知見を交えてSNSでシェアしたい。

 その嬉しそうな振る舞いが若者たちには裏目に出て、K-POPが好きな若者たちには“知ったかぶっている”ように映る。そして、K-POP界隈ではマイノリティな世代であることから、SNS上で人々の“興味の対象”として拡散された。

 それが、“NewJeansおじさん”だ。

 6月、東京ドームで行われるファンミーティングにも、“NewJeansおじさん”はいるだろう。苦手意識をもつ若者がいる一方、SNSでは「“NewJeansおじさん”という言葉のせいで、年齢層の高いBunnies(NewJeansのファンネーム)が肩身の狭い思いをしていて気の毒」「どの界隈だって中高年層のファンはいるだろう」など、中高年層のファンを心配するK-POPファンも多い。

 「NewJeasnsが好き」という気持ちは全世代同じだ。そして、“NewJeansおじさん”の存在こそ、レトロ戦略によって、NewJeansが他のK-POPグループと一線を画している証明でもある。

 “NewJeansおじさん”というワードが、SNSで拡散されるだけの“興味の対象”ではなく、世代をつなぐ架け橋へと進化したら、K-POPはもっと幅広い世代がポジティブな気持ちで楽しめる大衆カルチャーと進化していくのだろう。
《山田有真》
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