大井川下流域における地下水の地図を公開 - Kyodo News PR Wire|RBB TODAY
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大井川下流域における地下水の地図を公開



水文環境図No.15「大井川下流域」

ポイント
・ 地下水の利用が盛んな大井川下流域における水文環境図を公開
・ 目に見えない地下水の流れや深さなどの実態を可視化
・ 地域社会の健全な水循環の実現に貢献

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202503266312-O1-39i1EG55

国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下「産総研」という)は、静岡県環境衛生科学研究所と共同で、静岡県を流れる大井川の下流域を対象とした水文環境図No.15「大井川下流域」を刊行しました。大井川下流域は、大井川によって形成された扇状地の上に焼津市や藤枝市、島田市などの市町が広がり、地下水の利用が盛んな地域です。この地域では、地下水の利用や保全のために数多くの調査や研究が行われてきました。今回、それらの貴重な資料をまとめるとともに、現地での地下水調査や化学分析を行い、水文環境図を作成しました。

大井川下流域を流れる地下水は、主に大井川の河川水によって涵養されたものであり、その影響は下流域の広範囲(図中の赤い破線を境界とする範囲)に及んでいます。また地下水は、加圧層が存在する範囲において、浅い深度の不圧地下水と深い深度の被圧地下水に分かれており、それぞれが駿河湾に向かって流れています。地下水の温度に注目すると、大井川のすぐそばの井戸では、年間で4℃以上の地下水温の変化が確認されました(図中の赤い四角形で示された地点)。この現象は、水温の季節変化が大きい河川水が多量に浸透して地下水となり、その温度を保持しながら流れることで見られるものです。このことは、大井川の河川水が下流域の水資源にとっていかに重要な存在であるかを示しています。このように、地下水の情報を視覚的に理解できる水文環境図は、地域社会における健全な水循環の実現に貢献できます。また、水資源のみならず、地下の温度を利用した省エネルギー技術として知られる地中熱冷暖房システムの導入における適地評価への活用も期待されます。

下線部は【用語解説】参照

メンバー
小野 昌彦(産総研 地圏資源環境研究部門 地下水研究グループ 主任研究員)
岡 智也(静岡県環境衛生科学研究所 現 静岡県農林技術研究所 主任研究員)
神谷 貴文(静岡県環境衛生科学研究所 主査)
村中 康秀(静岡県環境衛生科学研究所 主任研究員)

入手先
本水文環境図は、2025年3月28日より産総研地質調査総合センターのウェブサイトで公開されます。https://www.gsj.jp/Map/JP/environment.html

用語解説
地下水位コンター
井戸の中に現れる水面の標高(地下水位)を多数の地点で測定し、その水位の等値線(コンター)を描いたものです。地下水位のコンターを描くことで、平面的な地下水の流動方向が分かります。

水文環境図(すいもんかんきょうず)
水文環境図は、地下水資源の利用や保全に係るさまざまな情報を、1枚の地形図上に表示できる地球科学図です。水文環境図は、過去に行われた地下水調査や研究の成果、近年に実施された地下水調査の結果に基づいて構成されており、地域における地下水の流れや水温、水質などの情報が分かる図面や説明書が収録されています。例えば、地下水の涵養源や流れている深度が分かっていれば、地下水の資源量を維持するために守るべき対象や場所が分かりますし、万が一の水質汚染が生じた場合にも、その影響範囲を予測して対処できます。また、地下水位の低下や地盤沈下などの課題を解決するためには、地下水を利用する事業者や保全を主導する自治体、地域の住民など、立場の違うさまざまな関係者の間で合意形成が必要です。合意形成の議論を進めるうえで、地下水の実態を知ることは必要不可欠であり、その情報を提供できるのが水文環境図です。

扇状地
礫や砂などが河川によって下流へ運ばれ、山地から低地に至る箇所で河川の運搬能力が弱くなることで、扇状に堆積してできた地形のことです。

涵養(かんよう)
降水や河川水などが地表から地下へ浸透して地下水になることです。

加圧層、不圧地下水、被圧地下水
地下水は、主に粘土層などの水を通しにくい層(難透水層)が上位にあることで、その下位にある地下水が圧力を受けた状態となります。このように被圧状態にある地下水を被圧地下水、その上位にある難透水層が果たす役割を指して加圧層と呼びます。一方で、上位に加圧層がなく、被圧されていない状態にある地下水を不圧地下水と呼びます。大井川下流域では、粘性土を主体とするM層が加圧層の役割を果たし、その下位にある被圧地下水が自噴している場所(自噴帯)が見られます。

地中熱
地下の温度は、十数メートル以深でほぼ一定の温度に保たれています。この熱エネルギーを地中熱と呼び、建物の冷暖房に利用されています。より詳しい解説は、産総研マガジンをご覧ください。
https://www.aist.go.jp/aist_j/magazine/20220511.html

 
プレスリリースURL
https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2025/pr20250328/pr20250328.html

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