29日、『グランメゾン東京』スペシャルが放送された。実は、2019年の同じ日にドラマ『グランメゾン東京』が最終回を迎えている。当時放送された同ドラマは大反響を呼び、続編希望の声も多く見られた。しかしその後、現実の世界はコロナ禍に。飲食業界があんなにも大打撃を受けるとは誰も想像しなかったろう。今回のスペシャルドラマは、コロナ後生き残るために落ちぶれてしまった「グランメゾン東京」が舞台だった。
ドラマは「苦しいコロナ禍を戦い抜いたすべての飲食業界関係者の皆様にエールを込めて」というテロップからはじまった。打撃を受けたのは星をとったグランメゾン東京も例外ではなかった。大企業から支援を取り付けるため“魂を売ってしまったグランメゾン”。シェフとしてよりも、CM出演や本業以外に忙しい早見倫子（鈴木京香）。冒頭の京都の鴨川での2人のシーンにて、尾花夏樹（木村拓哉）は「コロナのなかでもブランドを守り抜いた店はある。言い訳になってねーよ。全ては早見倫子シェフ、あんたの責任だ」と言い放つ。フランス料理レストラン「メイユール京都」で働く尾花は、「俺が（グランメゾン東京を）つぶしてやろうか？あんな店」「俺はグランメゾン東京を終わらせるために日本に戻ってきた」とも。結局、早見倫子ともども視聴者は尾花に騙されることになるのだが。この早見倫子（鈴木京香）と尾花夏樹（木村拓哉）の適度な距離感も、以前と変わらず心地よかった。突き離しているようで守っている、諦めたようで変わらぬ情熱でつながっている。お互いをよく理解している様子が描かれていた。
スペシャルドラマに登場のレストランメンバーはドラマシリーズとほぼ同じだったが、新味を加えたのは湯浅利久役の窪田正孝だ。湯浅はフランスのエスコフィユ時代に尾花らとともに働いていた仲間という設定。腕は一流だが、どこかクセのありそうな雰囲気。ネットでは「窪田正孝の役処が良い。ストイックさと嫌味っぽいところが最高に良い味」「木村拓哉と窪田正孝かっこいいなぁ」など注目を集めた。窪田はスペシャルドラマ出演にあたって「続編に参加できて素直に嬉しかったです」と感謝を述べるとともに、「木村さんに料理人の所作やしぐさ、手の動きなどを教えていただいたことが湯浅を演じるヒントにもなり、刺激的でした」と述べている。平古祥平（玉森裕太）の料理の素晴らしさに静かに驚く仕草、職人としての繊細さを醸し出す演技は流石だった。
料理監修はドラマシリーズに続き、実際に三ツ星獲得経験を持つ岸田周三シェフだった。料理は五感で楽しむ、とはよく言われる。視聴者は料理を味わうことができないので、視覚と聴覚は重要だ。ドラマの料理シーンを引き立てる音の演出も、相変わらず効果的だった。ネットでは「料理の音、楽しませてもらいました！」との声も見られた。
今回のスペシャルドラマは、本日から公開になる映画『グランメゾン・パリ』への導入作品だ。このドラマで興味を持った人が映画に流れるという効果も狙ったものであることは明らかだ。ただ、個人的には料理シーンの演出は映画館の大スクリーンよりもテレビの方が向いているような気がしないでもないのだが。舞台は、本場パリが主役になり、迫力のあるものになるだろう。「映画が楽しみすぎる」「楽しませていただきましたー！この流れで映画を見に行きまーす」「ドラマで映画の続編作ってほしい」などの声があがっている。
