本作は、2021年から2022年にわたった文芸誌『群像』の連載を大幅加筆。伯山が名作講談の舞台となった場所を訪れ、“物語”としての魅力を紹介するのはもちろん、師匠で人間国宝の神田松鯉との師弟対談も収録した一冊である。
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連載を執筆するなかで大変だったことについて問われると「“現場に行く”ということが大変でした」と伯山。「ただ文章は、(ライターの)九龍ジョーさんの聞き書きで、(伯山は)ずっと喋っているだけなので、それは楽でした。イエス・キリスト方式というか、(本作はプロのライターに書いてもらったが)弟子にかかせるっていうね。ソクラテスというか……」と述べて記者の笑いを誘った。
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講談師の世界において、多大な貢献をしている伯山だが、そのことについて触れられると「僕の貢献度は、もう絶大な貢献度。とんでもないレベル」と笑わせつつ「ただそういう役割を僕がしているだけであって、うちの師匠、お兄さん、姉さん方、後輩たちも一丸となってやっている。たまたま運だとか役割がめぐってきて、やらなきゃいけないことをしているだけ」と述べた。
そんな講談の世界に、もっと多くの人を誘うためには、どうしていくべきかと質問が投げかけられた。伯山は「いろんな方のお力を借りて、いろいろ種を巻いてる状態」と返答。各媒体で才能ある若者を振り向かせる作業をしている、としながら「僕なんかくらべものにならないぐらいの才能が、講談界に来ることを願っています」と期待を寄せた。
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この日は、落語家の五街道雲助が人間国宝に選ばれたニュースが報じられた。その想いについて問われると「ものすごく嬉しかったです!」と伯山。夫婦ともども世話になっているそうで「『雲助師匠は人間国宝だよな』とスッと体に入ってくる。ネタの数は膨大だし、お弟子さんも3人とって、3人とも売れっ子で、3人とも個性があって、とっても魅力的。名伯楽であり、名プレイヤーでもあり、それを実現している人」とこれまでの功績を讃えていた。