ホテリエたちの憧れの的であるキングホテルを舞台に、チョン・サラン(イム・ユナ)とキンググループ会長の息子、ク・ウォン(イ・ジュノ)が繰り広げるラブコメディー。イケメン財閥御曹司とその部下のホテリエが、反発し合いながらもお互いの魅力に惹かれていく様子をユーモアあふれる演出で描いていく。
■筆者プロフィール
咲田真菜
舞台・映画・韓国ドラマの執筆を手掛けるフリーライター。映画『コーラスライン』でミュージカルに魅了され、あらゆる舞台を鑑賞。『冬のソナタ』で韓国ドラマにハマって以来見続け、その流れで韓国映画、韓国ミュージカルにも注目するようになる。好きなジャンルはラブコメ、ファンタジー、法廷もの。ドロドロした愛憎劇は苦手。好きな俳優はイ・ビョンホン、イ・ジョンジェ、ヒョンビン、キム・ドンウク、チャン・ギヨン。いつか字幕なしで鑑賞したいと韓国語を勉強中。
咲田真菜
舞台・映画・韓国ドラマの執筆を手掛けるフリーライター。映画『コーラスライン』でミュージカルに魅了され、あらゆる舞台を鑑賞。『冬のソナタ』で韓国ドラマにハマって以来見続け、その流れで韓国映画、韓国ミュージカルにも注目するようになる。好きなジャンルはラブコメ、ファンタジー、法廷もの。ドロドロした愛憎劇は苦手。好きな俳優はイ・ビョンホン、イ・ジョンジェ、ヒョンビン、キム・ドンウク、チャン・ギヨン。いつか字幕なしで鑑賞したいと韓国語を勉強中。
(以下、物語の内容にふれるネタバレあり)
『キング・ザ・ランド』あらすじ
チョン・サラン(イム・ユナ)は、幼い頃に母親と行ったキングホテルの素晴らしさが忘れられず、ずっとキングホテルのホテリエになりたいと願っていた。短大卒の彼女にとって、一流ホテルで働くことは厳しい道のりだったが、面接時の対応力と美しい笑顔を認められ、1カ月の実習生から正社員になることができた。
長年のイギリス生活から帰国したキンググループ会長の息子で、キングホテルの超VIP向けラウンジ「キング・ザ・ランド」の本部長、ク・ウォン(イ・ジュノ)は、幼い頃に母親が突然失踪して以来、笑うことを嫌う男になってしまった。
生きていくために笑顔を絶やさないサランと笑顔を嫌うウォンが出会い、反発しながらも惹かれ合っていく。
『キング・ザ・ランド』登場人物&キャスト
ク・ウォン(イ・ジュノ)
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キンググループ会長の息子。長年イギリスで生活をしていたが、ある日行方不明の母親に関する謎の郵便物が届いたことをきっかけに帰国。キングホテルの超VIPのためのラウンジ「キング・ザ・ランド」の本部長に就任した。サランの笑顔にイライラしていたが、だんだん彼女の笑顔の魅力に惹かれていく。
チョン・サラン(イム・ユナ)
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幼い頃に母親と訪れたキングホテルの素晴らしさが忘れられず、有名大学卒のホテリエがほとんどの中、短大卒で1カ月の実習生からキングホテルのホテリエになった努力家。爽やかな笑顔と柔軟な対応力で、2年連続最優秀社員に選ばれている。直属の上司・ウォンのオレ様ぶりに呆れながらも、少しずつ惹かれていく。
オ・ピョンファ(コ・ウォニ)
サランと部屋をシェアしている親友。キンググループの系列会社キングエアの客室乗務員。人一倍仕事はするものの、なかなかチーフになれないことが悩み。
カン・ダウル(キム・ガウン)
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かつては、サランとピョンファと3人で部屋をシェアしていたが、現在は結婚して1人の娘を育てるワーキングマザー。キンググループ系列の免税店アルランガのチーム長。
ノ・サンシク(アン・セハ)
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ウォンと一緒にインターンをしていた縁で、現在はウォンの秘書として働いている。ウォンに対して言いたいことが言える数少ない友人の一人。
ク・ファラン(キム・ソニョン)
ウォンの腹違いの姉で、キングホテルの常務。キングホテルの後継者を争うウォンのことは敵対視している。企業は利益を生み出すことが第一と考える冷酷な人間。
ク・イルン(ソン・ビョンホ)
キンググループ会長で。ウォンとファランの父親。ウォンの母親でキングホテルの社員だったハン・ミソの話になると口を閉ざしてしまう。
イ・ロウン(キム・ジェオン)
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ピョンファの後輩で、キングエアの客室乗務員。誠実に仕事をこなすピョンファを尊敬し、女性として意識している。
スマイルクイーン、イム・ユナに「笑うな!」と命じるオレ様御曹司、イ・ジュノ
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アイドルグループ、2PMのメンバーとして活躍するイ・ジュノは、『赤い袖先』で第22代王のイ・サン役を演じ、その高い演技力に注目が集まり、俳優としての将来性に期待する声があがっている。今作では財閥の御曹司で、作り笑いを嫌うウォンを演じる。
失踪した母親に関して何か分かるかもしれないと帰国したものの、ウォンはキングホテルの事業に興味があるわけではない。「地位があり仕事が忙しくない役職」ということで本部長になるのだが、キングホテルのスマイルクイーン、サランと出会うことでこれまでと違う世界を見せられ、これまでのウォンのアイデンティティーが180度ひっくり返ることになる。
ラブコメにありがちな「出会った当初は、お互いに最悪の印象を持つ」という設定に、「またか…」と思う人もいるかもしれない。正直筆者もその一人だったのだが、それを差し引いてもジュノのクールなカッコよさと時折みせるお茶目な姿にくぎ付けになってしまう。
そしてドラマ『ビッグマウス』では、夫役のイ・ジョンソクを守るために勇敢に戦う妻を演じていたユナは、今回はうって変わって太陽のような明るい笑顔を惜しみなく見せてくれる。こんな2人の華やかなオーラは、何にも代えられない魅力だろう。
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ウォンとサランが出張で済州島へ行ったことが、2人にとって転機となった。空港で私服姿の美しいサランの姿に心を奪われたウォンだったが、「俺のタイプじゃない」と心の中で否定し続ける。しかし頭の中はサランのことばかりで、気持ちとは裏腹に一生懸命サランの気を引こうとする姿がかわいらしい。
サランは、ウォンのオレ様気質に呆れながらも、一緒に過ごすうちにウォンの人としての魅力に気付いていく。サランの別れた恋人は、友だちとの付き合いを最優先させ、誕生日を祝うことさえ忘れてしまうほどだった。しかしサランに一生懸命向き合ってくれるウォンの純粋さに心を開いていくようになる。
これまでのところ、ウォンもサランも思わず吹き出してしまう明るいシーンが多い。しかしウォンは実の母親が行方不明になっている暗い過去があるし、サランも両親がすでにいなくて、祖母の手で育てられた境遇だ。
物語の後半は、ウォンの母親の消息が明らかになっていくだろう。そしてお約束の「身分違いの恋」に対するさまざまな障害が描かれていくことが予想される。どのような展開になっていくのか、これまでと一味違うラブコメになるよう期待したい。
気になるサブカップル ピョンファ&ロウン
サランの親友、オ・ピョンファ(コ・ウォニ)と彼女の後輩、イ・ロウン(キム・ジェオン)の恋の行方も気になるところだ。ロウンを演じているキム・ジェオンは『私たちのブルース』で、チャ・スンウォンが演じた役の高校生時代を爽やかに演じて、注目された。
ピョンファは、客室乗務員として真面目に仕事をこなす女性だ。しかし上司に取り入ってずる賢く世渡りをする同期に比べ、出世が遅れている。同期が上司となり、ピョンファを見下した態度をとるのに、やけにならず黙々と仕事をこなす魅力的な人物だ。
そんな彼女の姿をそっと見守っているのが、ロウンだ。ピョンファのピンチになると必ず助け、まるでスーパーマンのように登場する姿は頼もしい。ピョンファに対する想いも隠すことがなく、ストレートに愛情表現をする。
しかしピョンファは年下のロウンの気持ちをどう受けて止めていいのか、戸惑っているようだ。過去に妻子持ちの機長と不倫をしていたことが伺え、ピョンファの心に暗い影を落としているのかもしれない。
ピョンファにかける言葉は少ないが、いざという時に言うべきことをはっきり言うロウンのたくましさに、この2人の関係が良い方向にいってほしいと応援してしまう。
意地悪な人物が多いのは、リアルな職場を表現したいから?
本作が配信された直後、SNSで「サランたちのまわりにいる同僚があまりにも意地悪すぎ!」といった類の書き込みを見かけた。
全く同意見で、サランを短大卒だとバカにするキム支配人(コン・イェジ)や、ピョンファを見下している上司で同期のユ・スヒョン(ぺ・ミンジュン)、ダウルが働く免税店にスーパーバイザーとして着任し、仕事はしないのに嫌味ばかり言うト・ラヒ(イ・ジヘ)など、強烈で意地悪な人たちがたくさん登場する。
また同僚ではないが、ダウルが最も頼りたいのに、子育ても家事も何も手伝ってくれない夫のチュンジェ(チェ・テファン)や、ウォンの腹違いの姉、ファランの存在にイライラする人も多いだろう。
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これだけ意地悪な人たちを集めたのは、リアルな職場や現実の生活を表現したかったのだろうか。過酷な状況でも頑張るサラン、ピョンファ、ダウルを視聴者に応援させたいのだろうか。または豪傑な姉に立ち向かっていくウォンの覚醒を見せたいのか。
そんな中、サランの上司でキング・ザ・ランドの総支配人、チョン・ミンソ(キム・ジョンミン)とウォンの秘書となって率直な意見を言うノ・サンシク(アン・セハ)が持つ温かい雰囲気は、厳しい職場のオアシスのような役割を果たしている。そしてなんといってもサラン、ピョンファ、ダウルの友情に毎回癒される人が多いだろう。それぞれが仕事でつらい思いをしているが、いざ集まると愚痴もそこそこに、楽しく飲んで食べて踊る3人を見ていると「笑顔になれるって素晴らしい!」と心から思う。
第8話では、ウォンとサランがロマンチックなキスをし、お互いの気持ちを確かめ合った。全16話なので半分が過ぎたわけだが、今後はウォン&サランの恋の行方はもちろんのこと、ウォンの母親の行方やピョンファ&ロウンの恋の行方に進展があるのか、今のところ一人娘しか味方がいないようにみえるダウルに穏やかな日々はくるのか、後半注目したいところが盛りだくさんだ。
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