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昔ながらのダイヤルと電子ペーパー画面を搭載
ダイヤル式の携帯電話「Rotary Cellphone」を作り、そのプロセスなどをWebサイトで公表したのは、米国の国立研究所のエンジニア、Justine Haupt氏。多くの人が自分で制御も理解できないままにスマホを使っているなかで、物理的に操作でき、テキストメッセージを使わない言い訳にもなる実用的な携帯電話を作りたいと考えて制作を手がけたそうだ。
Rotary Cellphoneはポケットに収まるサイズで、3Gネットワークに接続して利用する。前面にはダイヤルに加えて、登録した連絡先に簡単に発信できるボタンや着信応答のためのボタンなどを搭載し、バッテリーは約24時間作動するとのこと。アンテナはSMAコネクタで着脱でき、指向性アンテナを取り付けることも可能だ。
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上部から背面にかけての部分には電子ペーパーのディスプレイを備え、上部には不在着信などの番号を、背面には連絡先のリストなどが表示される仕様になっている。
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サイド面に搭載されている電源スイッチにも物理的なスライドスイッチを採用。また、反対側のサイド面には電波強度を10段階で示すLEDが搭載されている。
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自作したいという声が多数寄せられたことを受け、Rotary Cellphoneを制作するためのキットもHaupt氏の会社のサイトで販売されている。キットはメインボードと外装ケース、ボタンがセットになったもので、制作のためのドキュメントやファームウェアも公開されている。さらに、4Gネットワークに接続する「マーク2」バージョンのリリースも予定しているとのことだ。
制作は「すべてにこだわった」次バージョンは10年使えるものに
個性的な端末を作るにあたってのこだわりや今後のビジョンについて、制作者のHaupt氏からコメントをもらった。
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――触覚的に操作できる電話を作りたかったとのことですが、ボタン式ではなくダイヤル式を選んだ理由は?
Haupt氏:私はスマートフォンにうんざりしていたので、できる限り古いインターフェイスでスマホより電話として優れた製品を作りたい思いました。これは、連絡先リストに登録した人にスマホよりはるかに早く電話をかけられるという事実によって証明されていると感じています。
――制作において一番こだわった部分を教えてください
Haupt氏:電子ペーパーのディスプレイや、直感的に操作するためのボタンの配置、バッテリー寿命、マイクコントローラー、美しさなど、すべての部分にこだわって作っています。ダイヤルだけはヴィンテージの電話から入手できるものが限られてしまうため、あまりこだわっていませんが、それでも非常に特殊なロータリーダイヤルを使用しています。
――4Gネットワークに接続する「マーク2」バージョンをリリース予定とのことですが、これは完成品としても販売されるのでしょうか?
Haupt氏:キットだけでなく、完成品としてもリリースできるようにしたいと思っていますが、そのためには米国のFCCによる規制当局の承認が必要なので、まだどうなるかわかりません。まずは現在の3Gバージョンよりもはるかに簡単に構築できるキットとしてリリースすることをめざしています。完成品が出せるとしたら、おそらくその後になるでしょう。
――「マーク2」以降も、新しいバージョンを作る予定はありますか?
Haupt氏:それは考えていません。マーク2バージョンを今後10年間は使いたいと思えるような高精細な設計にすることに力を注いでいます。ただし、回転式ダイヤルを望まない人のために、タッチトーンボタン付きのマーク2代替バージョンを作る計画はあります。
――今後、携帯電話以外に新しい製品を作る構想はありますか?
Haupt氏:私は国立研究所の研究者・エンジニアで、この仕事がとても好きですが、オープンソースのハードウェアを作る会社を始めることも長い間構想していました。私の会社はロボット工学に重点を置いて創造的に物を作るための発明工場のようなものだと考えおり、この数年間、最初のロボット製品の開発に取り組んできました。Rotary Cellphoneは個人的なプロジェクトとして作ったもので販売するつもりはありませんでしが、たくさんの人からの購入を希望する声があり、製品として販売することを決めました。
会社を立ち上げた今、Rotary Cellphoneに加えて、ロボット工学専用のブラシレスモーターコントローラーを販売しています。まもなく電動ホイールも購入できるようになります。製品として製作し、提供していきたいもののアイディアは尽きません。
セルラーモジュールが日本で動作するかどうかの確認は行っていないものの、キットは日本からも購入可能とのこと。現行バージョンのキットは、すでに日本からの数件の注文があったそうだ。老若男女があらゆることにスマホを使うのが当たり前になった今、Rotary Cellphoneは「電話」の原点に立ち返り、煩雑化してしまったコミュニケーションのあり方を見直すためのアイテムとして役立ちそうだ。