
■位置情報がなくても、その投稿が“どこ”か分かる!?
「Spectee」ではTwitterやFacebook、Instagramなど、SNSに投稿された情報を自動解析。事故や自然災害などの緊急情報を抽出し、それらをタグ付けしたうえで、マスコミ各社や自治体などに配信している。元々は2011年の東日本大震災の際、ツイッター上に被災情報や支援要請の投稿が数多く上がっているのを見て、それをまとめようと始めたサービスだ。
「Twitterには国内だけでも1日に約5億ツイートの投稿があります。それを人が24時間チェックするのは難しいですし、いろいろなキーワードから情報を抜き出すのも容易ではありません。こういう仕事はAIにやらせるのが一番なんです」(村上氏)

なお、SNSには画像や動画も投稿されるが、そこに映っているものも自動で認識しているという。会場では火災現場の動画を利用したデモが行われていたが、消防車や煙、火などが、それぞれAIによって認識されていた。村上氏によると、他にも土砂崩れ、河川の氾濫、事故なども識別できるという。

近年ではプライバシーポリシーの厳格化によって、投稿された画像に位置情報が添付されなくなったが、「Spectee」では過去を含めた投稿者の投稿を検索。数分前に利用したとされているお店を調べ、大雨が写っている写真と気象情報を照合するなどして、その投稿の位置情報を推測するという。過去の投稿から、その投稿者の現住所を推定することもあるようだ。画像に標識が写っていたとしたら、そこにピンがあっていなくても解析し、地名データベースとマッチングするというから、ある意味で恐ろしくすら思えてくる。
■京アニ放火事件を発生5分で認識、発信していた

「台風19号では10月12日から13日にかけて、台風関係として4019件の情報を配信しました。その件数は深夜0時にピークを迎えましたが、これは多摩川が氾濫した時間です。さらに、翌2時頃には千曲川の堤防が決壊しましたが、深夜の時間帯にもSNSにはいろいろな投稿があがっています」(村上氏)
深夜に撮影スタッフを急行させて、現場の様子を撮影するのは難しい。その点で時間を問わずに現地の写真や映像を拾えるのは、SNSの強みだと村上氏は話している。

さらに、情報発信のスピード感においても、SNSはテレビ局と一線を画している。今年7月に起きた京都アニメーション放火事件では、事件発生から約5分後には火災発生の第一報が「Spectee」で配信され、約11分後には現場が京都アニメーションだと判明していたという。ちなみに、NHKがニュース速報を発信したのは、事件発生から50分後のこと。それまでには48件の投稿を、SNSから関連情報として抽出・配信していたというから、そのスピード感の違いは明確だ。
なお、このセミナーの間にも、「第一報 西鉄天神大牟田線 踏切事故との情報 西鉄柳川駅から徳増駅」とのアナウンスが、「Spectee」が導入された村上氏のパソコンから発せられた。音声による読み上げがあるため、いちいち画面を見ていなくても情報収集できるというのは、スピード感が求められる報道の現場では嬉しい機能だろう。
SNSの投稿となると、その正確性が気になるところだが、「Spectee」ではデマ対策にも力を入れている。デマを投稿する人が意図的に使う単語や文脈をデータベース化して、投稿とマッチング。また、投稿に貼り付けられた画像についても、デマのものはネット上にあるものを転載していることが多いため、類似しているものがないか検索しているという。もちろん、各SNSのユーザーIDのブラックリスト化も行っているようだ。