読者の方から「貸切バス事業者らは、今後順調に高速バス分野にシフトできそうか?」とご質問をいただいたが、実は、それはとても困難だ。B to B事業である貸切バス(旅行会社などにチャーターされ、その希望通りに運行)と、B to C事業である高速バス(都市間など特定の区間を毎日、決まったダイヤで運行。商品設定や集客は自らが行う)とでは、事業者に求められる機能や体力が全く異なる。それに、後者では、その運行に必須である「停留所」の新設が容易ではなく、事実上「既得権」に近い意味合いを持つからである。
本年4月、JTBグループは、同グループに属するスペインの旅行会社が欧州を中心に展開中の「SIC(Seat in Coach)」という商品群を日本にも導入すると発表した。SICは、貸切バスで周遊観光しながら別の都市へと移動するバスツアーで、ルート単体での乗車も、また複数ルートを乗り継ぎ長い旅程を組むこともできる(同社は「乗合型観光バスツアー」と称しているが、バス業界では「乗合」は別の意味を持つので「混乗型観光バスツアー」の方が業界に受け入れられやすいだろう)。旅程中に宿泊を組み込みガイド同乗の貸切バスで観光地を巡る形式は「発地型ツアー」に近いが、様々な国から集客できる分、多様な商品を設定でき、旅行者自らが選択し組み合わせられるので、旅程の自由度はある程度担保される。