インバウンドの増加に伴い、その集客につながるような取り組みが観光向けの施設で増えている。中には、いわゆる外国人が考える“ザ・日本”を前面に打ち出した、写真映えのする派手な演出も少なくない。日本人からすればやりすぎでは?とも思えるが、海外観光客の要求に応えることが集客につながることは確かだ。問題はどこまでがOKでどこからがNGなのか? そのさじ加減の参考になりそうなのが、“日本の魅力を一度に味わえるエンタメ旅館”をコンセプトに、2016年に誕生した「The Ryokan Tokyo YUGAWARA」だ。
The Ryokan Tokyo YUGAWARAの立ち上げ時に参考となったのが、世界最大級の旅行口コミサイト「トリップアドバイザー」における訪日外国人のレビューだ。一目で日本とわかる、シンボリックで写真映えするものがウケるのではないか? そう考えた時に、取り入れるべきと要素となったのが伏見稲荷であり、浅草の雷門であり、富士山だったという。
「予約サイトで宿を探す場合、まず写真を、次に口コミを見ますよね。そこで思わずクリックしてしまう写真、驚きと感動が書き込まれた口コミが必要となり、The Ryokan Tokyo YUGAWARAはこれを満たしているのだと思います。日本の観光情報が少ないであろう国々から予約が入るのは、いかにも日本的な、わかりやすい写真の効果が大きいのではないでしょうか」
■キーワードは“参加型”と“交流”
The Ryokan Tokyo YUGAWARAが参加型アクティビティに注力している理由は、「感動と驚きがあり、思わず写真に撮って発信したくなる」から。書道やコマ回し、招き猫の絵付けなど、日本文化に触れる感動と、他ではできない日本の日常体験の演出が、ネットでの発信に繋がっている。
滞在時間に体験を盛り込む工夫は客室にも見られる。「How to set up Futon」という説明書きを見た滞在客は、布団を自らの手で敷く。ちょっとしたイベントを提供するともに、スタッフの手間も省ける取り組みだ。
The Ryokan Tokyo YUGAWARAの演出を見る限り、重要なのは和の本質を大切にしつつ、思わず写真に収めたくなる演出を加えること。結果的に演出が派手になっても、その部分を外さなければ、さじ加減を間違うことはなさそうだ。そのヒントや判断基準として、外国人が利用する旅行口コミサイトは、大いに活用すべきだろう。
《尾崎美鈴/HANJO HANJO編集部》